帰国もできない散歩にも行けない…フランス在住の日本人はコロナで窮地の日々
「もう無理、日本に帰りたい…」 この数か月、このようなツイートを頻繁に見かけるようになりました。
新型コロナウイルスによる外出制限が2か月以上続き、一部の地域では18時以降外出禁止になるなど、フランス中がストレスの渦中にありますが、在仏日本人は、フランス人の行動と、日本人的感覚の間で苦しんでいます。我慢の限界に達している人も少なくありません。 フランスでは、コロナウイルスの新規感染者が多い日で1日8万人、累積感染者は270万人に達し、死者数は6万5000人を超えました。フランスの人口は日本の約半分ですが、感染、死者数は日本の10倍以上を記録しています。 昨年10月30日から始まった2回目のロックダウン(外出制限)は今も続いています。12月からは外出制限の段階的緩和が計画され、大晦日は外出制限が特別に解除されると言われていました。しかし、新規感染者数が目標数(1日5000人)まで下がらず(当時は1日1万人前後を推移)、結局、大晦日も他の日と同様、20時以降は外出禁止になりました。
コロナ禍、ロックダウン中のフランス人の行動
外出等の自由を制限されていること自体も、もちろんストレスなのですが、日本人にとっては、ルールを守らないフランス人にストレスを感じることが多いようです。 11月末にはパリ郊外で、約300人の若者が隠れて集まり、パーティーをしていたとことがニュースになりました。パーティーで喧嘩が起きて警察に通報されたことで発覚したのですが、駆け付けた警察官は、たくさんのアルコール飲料や使用済みのコンドームなど、「濃厚接触していたであろう証拠」を発見したそうです。 この時期は、大人数の集まりや1時間以上の外出は禁止されていて、違反者は約1万5000円の罰金が科されることになっていました。しかし、パーティー参加者たちは警察官を見て一斉に逃げ出したそうです。 大晦日には、ブルターニュ地方で約2500人が「ロックダウンパーティー」をしていたことがニュースになりました。20時以降はそもそも外出禁止という状況の中、マスクをせずにレイブ音楽に興じていた参加者は、麻薬を使用していた人もいて、駆けつけた警察の車に火をつけるという、驚くべき行動に出ました。結果、ヘリコプターを含め、憲兵隊70人が出動する騒ぎとなり、8名が拘留されました。 外出制限を無視して集まるフランス人は、ニュースにならないだけで、かなりいるようです。 ツイッターでも、フランス人のパートナーを持つ日本人の怒りと呆れの入り混じったツイートが散見されます。 「夫が友人に飲み会に誘われた、外出禁止という時期なのにありえない」 「長距離の移動は禁止なのに、夫の家族が飛行機で友人に会いに行っている…」 パリに住むアナウンサーの中村江里子さんも、家族が食事会に誘われたことについてブログで次のように“怒り”を綴っています。 「ロックダウンしても成果がなければフランス人は政府のせいにするでしょう? 甘えすぎよ!!」 私も「金曜の夜に外出制限が始まるから、当日は有休を取って前日夜から仲間とパーティーをした」という人の話を何度も聞きました。 フランスではクリスマスに家族や親戚で集まる慣習がありますが、私のフランス人の夫家族が今年は集まりを中止にしたと話したら「そんな(真面目な)フランス人、初めて聞いた」と言われたほどです。それほど「自粛」するフランス人は少ないということでしょう。 フランスらしい「デモ」も複雑な思いを抱いてしまいます。外出制限令が敷かれていても、デモは完全禁止というわけではありません。11月は毎週のように治安関連法案に反対するデモなどが行われていました。 数千人規模のデモ参加者が一か所に集まり、叫び声をあげて行進したり、移動し、時には警察と衝突します。メディアもその様子を取材し、マスクをはずしてインタビューに答える人もいました。 「国民にとって大切なことは、ロックダウン中でも決行する」というのはフランス人らしいところですが、感染拡大という面から見ると、「こんな時にデモのために集まって叫んだり、マスクを外したりして、大丈夫なのだろうか…」と感じている日本人も多くいます。 生真面目な日本人は、外出を控えているだけでなく、感染のリスクとなる行動を控える用心深さもあります。 衛生面に無頓着で、外出制限も守らないフランス人を見て、「コロナの感染拡大から1年も経つのに、何も学んでないの? こんな簡単なこともわからないの?」といういらだちを感じたり、真面目に引きこもっている自分達が馬鹿らしく思えてくることもあります。 また、この期に及んで行動を変えようとしないフランス人を見ていると、今後、何度もロックダウンを繰り返すのではないか、という不安が拭えません。