なぜ? 倍速で映像視聴する若者たち 作品を“鑑賞”から“消費”へ
映画などを無許可で短く編集した「ファスト映画」を動画サイトに投稿していた男女3人に対し、日本テレビや東宝など原告13社は、5億円の損害賠償を求める訴えを起こしました。なぜ「ファスト映画」が視聴されるのか。そこには近年、若者たちが多用している「映像の倍速視聴」の影響が考えられます。映像の視聴方法の変化について取材しました。 「ファスト映画」とは、制作者ではない第三者が、あらすじや結末がわかるような形で映像作品を勝手に短く編集して、動画サイトなどにアップした違法な映像です。昨年初めて逮捕された男女3人は、それぞれ著作権法違反の罪で有罪判決が確定していて、原告側弁護士によれば損害額は20億円にのぼるということです。
■なぜ「ファスト映画」を見る?若者たちの動画の視聴方法に変化
なぜ映画館に行かず「ファスト映画」を見るのでしょうか。東京・渋谷で10代から30代の男女15人に話を聞きました。すると「ファスト映画」だけでなくインターネット上での動画の再生方法に共通した特徴があることがわかりました。 それはYouTubeやNetflixなどにも導入されているもので、動画を1.25倍から2倍程度の速度で再生する「倍速視聴」といわれるものでした。 東京都内在住の女子大学生(20代)はこのように語りました。 「映像作品などの動画を見る時には、必ず1.5倍速程度にして見ています。見たい映像がたくさんあり、倍速視聴でないと時間が足りないのです」 コロナ禍で大学の授業はオンラインのビデオ方式になり、「授業も倍速視聴」していると語りました。 またファスト映画は「違法かもしれないが、手軽にストーリーを知れて便利」という声も聞かれました。
■じっくり見なくていいものは「ファスト映画」でコスパ良く視聴
日常的に「倍速視聴」しているという別の女性(20代)は、ファスト映画の視聴経験はあるものの、逮捕者が出るまでは違法だとは知らなかったといいます。 「じっくり見なくてもいい作品は倍速とかファスト映画でストーリーだけを知ることができるからコスパもいい。本当に見たいものはそのまま見ます」 「時間がなければ見なければいいのでは?」という記者の問いには、「(様々な映画を)見ないと友人との話題についていけない」といい、半ば「見なければならない状態」に陥っていると語りました。