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ミニバンがライバル? プジョー「リフター」とはどんなクルマか

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マイナビニュース

2020年秋にも日本への本格導入が始まるプジョーのMPV「リフター」。ミニバン、SUV、ワゴンの魅力を1台に詰め込んだトールワゴンスタイルのクルマという触れ込みだが、実際のところ、どんなクルマなのだろうか。日本の道路で試乗して確かめた。 【写真】けっこう重いスライドドアだが、開けるとこんな感じだ ミニバン、SUV、ワゴンのいいとこ取り? プジョーは2018年2月のジュネーブショーでマルチ・パーパス・ビークル(MPV=多用途車)のリフターを発表。日本では2019年10月に特別仕様車「Debut Edition」(デビューエディション)を発表し、予約の受け付けを開始した。本格導入は2020年秋を予定している。今回は特別仕様車に試乗してきた。 プジョーの資料によれば、リフターはミニバン、SUV、ワゴンのすべての魅力をクロスオーバーさせたトールワゴンとのことである。競合車種は同じくフランスのルノー「カングー」と想定されるが、リフターはカングーよりもひと回り大きな車体を持つ。具体的には全長4,403mm(カングーに比べ+12.3cm)、全幅1,848mm(同+1.8cm)、全高1,878mm(+6.8cm)だ。 リフターは商用バンをベースに開発したとのことだが、この点もカングーと同様だ。商用バンの使い勝手と、乗用車としての快適さを併せ持つクルマといえる。 車体の背が高く、後ろがスライドドアとなっていることから、国産車では日産自動車「セレナ」やトヨタ自動車「ノア/ヴォクシー」など、5ナンバー車格のミニバンも競合になるかもしれないが、リフターはミニバンではないので3列目の座席はない。 デビューエディションはディーゼルターボエンジンを搭載する。この点も、カングーや国産の5ナンバーミニバンと異なる点だろう。競合との比較や、競合からの乗り換えなどを考えた際、ディーゼルエンジンの振動や騒音、あるいは排ガスなどについての心配があるかもしれない。 リフターのディーゼルターボエンジンは排気量1.5リッターで、出力は130馬力だ。これに8速のオートマチックトランスミッションが組み合わされる。 欧州からの輸入車を中心に、近年はディーゼルターボエンジン車の日本導入が増えているが、リフターの場合、エンジンがアイドリングで回っているときに車外で聞いていても、ディーゼルとは気づかなかったほど騒音が抑えられていた。車内にいると、ディーゼル車であることを忘れるほどだ。 逆に、給油の際には軽油を入れることを忘れないようにしなければならない。日本のレギュラーガソリンのオクタン価は欧州に比べ低いため、国内で輸入車に乗る場合はプレミアムガソリンを入れなければならないことが多い。プレミアムガソリンと軽油の1リッターあたりの価格差は30円前後。リフターをはじめとするディーゼルエンジン搭載の輸入車に乗れば、長い年月を乗り続ける場合や遠出をする際などに、燃費のよさと燃料代の安さによる利点を実感できるのではないだろうか。 スライドドアが重い… 運転席に座ったときの視線はミニバンのように高く、見晴らしがよい。一方で、車体の幅は1.8m以上あり、加えて左端の様子をややつかみにくい面がある。例えば高速道路の料金所のゲートを通過する際に、左の様子が分かりにくく不安になることがたびたびであった。それでも、回転する際の小回りは効いて、市街地での取り回しは悪くなさそうだ。自分のクルマとしてリフターを手に入れた際には、車幅感覚を早く身に着けるといいだろう。 座席は小ぶりに見えるが、きちんと体を支えてくれる形状だ。クッションにも弾力があり、腰や背中の支えがしっかりしていて疲れにくい。フランスの人たちは夏に1カ月ほどの休暇を楽しむが、そうした長旅にもよさそうだ。3人掛けの後席も、ひとつひとつが個別の座席の形をしており、きちんと座れることを重視していることがうかがえる。ただし、座席のアレンジも考慮したせいだろうが、後席は座面の長さがやや短かった。 リアハッチゲートを開けると、荷室は見るからに広々として大きい。ベースが商用バンであるだけに、荷物の積み下ろしはしやすそうだ。助手席の背もたれを前方へ倒しこむと、かなり長いものを積み込める。ただその際には、助手席のひじ掛けを取り外す必要がある。 リアハッチゲートとは別に、リアウィンドウ部分だけを開閉できる機構も備える。荷室に置いた小物などを出し入れするのに便利だろう。 室内の収納も充実していた。天井の高さを活用し、車内の前後とも、天井の下には小物入れが設けられていた。 MPVとしての実用性の高さが感じられるリフターだが、唯一残念なのは、後ろのスライドドアの開閉が硬く、重いことだ。昨今はやりの電動での開閉機構は、フランスで販売している仕様にも付いていないという。それにしても、動き出しが硬く、スライドも重い。ことに乗車後、室内から閉じようとしたときには、なかなか動かなかった。MPVの位置づけからすると、致命的な弱点となりかねない。手動でも、より軽く滑らかにスライドドアを動かす策はあると思えるのだが……。 運転を楽しめるMPV 運転をし始めると、低速から十分な力を出すディーゼルターボエンジンの効果がすぐに表れた。発進、そして加速で、アクセルペダルをそれほど深く踏み込まなくても軽やかに走る。冒頭でも述べたが、ディーゼルエンジンならではの振動・騒音も気づかないほどなので、いたって快適だ。高速道路へ入り、速度を上げていく際も伸びやかに加速し、快い。 乗り心地は、市街地を走る段階からしっかりとした落ち着きがあり、1.8m超の車高であるにもかかわらず、ふらつくような素振りがない。時速60kmを超えるあたりから、車体がグッと沈み込むような安定感がさらに増し、タイヤがしっかりと路面をとらえているというグリップの様子をハンドルから手の平に伝えてくる。路面の凹凸もうまく吸収し、車体が跳ねてしまうようなこともなかった。 乗り心地と操縦安定性が絶妙に調和していて、乗用車として上質な乗り味といえる。しかも、静寂というほどではないものの、耳に届く騒音には気に障るような周波数が突出したところがないため、やがて忘れてしまうほどだ。前後の席での会話も普通にできた。これであれば、乗員すべてが快適に長旅を続けられるだろう。また、軽やかに回るディーゼルターボエンジンと8速オートマチックトランスミッションによる適切な変速も、滑らかな走りを助けている。運転を楽しめるMPVだ。 ここでもうひとつ残念なのは、運転支援機能を調整するスイッチが、ハンドル裏側のレバーで操作する方式であることだ。近年では、多くのクルマがハンドルのスポークで調整する方式を採用しているが、こちらは操作スイッチを確認しやすく、便利だ。ところが、ハンドル裏側のレバーでは、手探りで操作するシーンが増えるため、失敗を繰り返しながらの運用となる。たとえ自分のクルマとなっても、毎日のように運転支援機能を使わなければ、操作方法を忘れてしまう可能性もある。 リフターは、ハンドルの上からメーターを見る独特な手法を用いている。そのため、ハンドルに運転支援のスイッチを設けるような新規開発を行うには、相応の原価が掛かるという事情があるのかもしれない。しかし、長旅に運転支援機能の活用は有効なので、ここは早く改善してほしい点だ。 それ以外は、多くの点で好感の持てるMPVであり、実用性のみならず、走行性能においても高い水準にある。車幅が広いことが車庫入れの際には気になるかもしれないが、欧州の人たちがクルマに求める合理性や性能を実感できる1台ではないだろうか。 著者情報:御堀直嗣(ミホリ・ナオツグ) 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。

御堀直嗣

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