新型コロナ猛威 山口県内累計1382人感染、地域経済は悲鳴 中国地方初の感染確認から1年
山口県が中国地方初の新型コロナウイルス感染を県内で確認してから3日で1年を迎えた。今月2日現在、累計の感染者は1382人、39人が亡くなった。猛威を振るった未知のウイルスへの対応に行政は追われ、地元経済も観光業を中心に大打撃を受けた。この1年を振り返る。 【グラフ】山口県の新型コロナウイルス感染者数と医療提供状況
クラスター18件、8件は1月に集中
村岡嗣政知事に初感染の一報が入ったのは昨年3月3日午後11時半ごろ。翌4日朝に急きょ開いた記者会見で「県民の安全安心を第一に感染拡大の防止、不安の解消に向け全力で頑張っていきたい」と強調した。 これまで三つの感染の波が県内を襲った。5月5日までの「第1波」の期間は計36人。県がユーチューバー男性を起因とした感染確認を発表した7月17日~10月中旬の「第2波」が計175人だった。11月初旬からの「第3波」は計1171人と急増。中でも1月は648人に上り、全18件のクラスター(感染者集団)のうち8件が発生した。死者の9割超が今年に入ってからだ。 県は感染拡大に備えて医療体制を段階的に充実させてきた。当初は1日当たり60件だったPCRなどの検査を、民間と連携して最大約4250件に拡充した。病床数も40床から475床に増やした。軽症者や無症状者向けの宿泊療養施設も834室を用意している。 県内での感染者は減少傾向。県はワクチン接種に向け、市町と連携して準備を進めている。村岡知事は2日の県議会代表質問で「引き続き緊張感を持ち、ワクチン接種や医療体制の一層の強化に取り取り組む」と決意表明した。
湯田温泉や萩で経営破たん相次ぐ
地域経済は悲鳴を上げた。中でも観光業界は苦境が続く。県旅館ホテル生活衛生同業組合(会員数212)の伊藤勝志事務局長は「今の売り上げは前年に比べ8割も少ない。土産物や飲食への影響も出ている」と声を落とす。 同組合によると、3月末までの1年間で組合加盟15施設が営業をやめることになる。山口市の湯田温泉や萩市ではホテルの経営破綻が相次いだ。 県は支援策で昨年7、9月に額面5千円分を半額で買えるプレミアム宿泊券を計51万枚発行。政府の観光支援事業「Go To トラベル」と併用でき、宿泊者数は都道府県で唯一、9~12月に4カ月連続で前年を上回った。 ただ国が昨年末にGoToを全国一律で停止し、年明けに緊急事態宣言を再び出したことで一気に冷え込んだ。県が大手旅行代理店に聞き取ったところ、1、2月の宿泊予約は昨年より7割少ないという。 山口労働局が2日発表した新型コロナに関連する解雇・雇い止めは県内で821人(2月26日現在)。宿泊・飲食業が284人で34・6%を占めた。村井完也局長は「コロナの影響が長期化している」と指摘する。
中国新聞社