つるバラの冬の整枝と誘引について。春の芽吹きが始まる前に整枝と誘引を行う
『趣味の園芸』で連載中の「姫野流 つるバラを楽しむ12章」、12月号掲載・第9回のテーマは「冬の整枝と誘引」。温暖地では12~2月に、大切に育ててきたつるバラの枝にいよいよ整枝と誘引を行います。12月号と1月号の2回に分けて、整枝と誘引の基本的な考え方と作業のコツをお伝えします。鉢植えのつるバラの冬の作業は2月号でご紹介します。 12月号より、一部抜粋してお届けします。 みんなのつるバラの写真
整枝と誘引の目的
つるバラは前年に伸びた枝に花を咲かせます。そのため、木立ち性のような深い剪定は基本的には行いません。つるバラにおける冬の整枝と誘引は、美しく観賞するために姿を整えることと花つきをよくする目的があります。 私はつるバラの冬の剪定は、「整枝」だと考えています。ちょっと極端かもしれませんが、木立ち性のバラの剪定がロングヘアをショートヘアにカットするような大胆さがあるのに対し、つるバラの整枝はお出かけ前に美容院で毛先をそろえてもらうようなイメージです。 バラはツタのように吸着したり、自ら巻きついたりすることはありませんので、そうして整えた枝を、咲かせたい場所で、咲かせたい姿で開花してくれるように留めつけていく作業が「誘引」と考えております。 小輪系の品種は整枝や誘引をしなくてもよく咲いてくれますが、ご家庭で楽しまれる場合は冬にひと手間を加えることでよりすっきりと、美しい姿で春の開花がお楽しみいただけます。
枝先と花の咲いた枝、わき枝の整理をする
株が2年目、3年目と成長し、枝数がふえてきたら、毎年冬に、面倒でも支柱や構造物から枝をいったんすべて外し、整枝と誘引を行いましょう。古い枝を外さずに誘引を行いますと、絡まった枝の力が強まって構造物を壊したり、変形させたりすることになりかねません。枝が絡まってどうしても外せない場合は切断もやむなしですが、できるだけ古い枝から切断し、栄養の流れやすい若い枝を優先的に残すようにします。 整枝は株元から長く伸びたシュート(ベーサルシュート)の先と、花を咲かせたあとの枝、わき枝の整理が中心となります。シュートはできるだけ長く生かすことを心がけ、わき枝は2~3芽ずつ残して切り詰めたほうが、開花時の姿がすっきりと美しく見えます。 さらに大株になりますと、枝数が多くなるため、わき枝とシュートの見極めが必要となります。その点については次号で詳しくご説明させていただきます。 一方、小輪系は大輪系に比べて枝が細く、本数もずっと多くて、それが自然な姿でもあります。小輪系になるほど枝を整理せずに、品種本来の姿も生かしたいものです。 人それぞれ思い描くつるバラの開花時の姿があると思います。今月と来月は、美しさを引き出して、見る人を幸せにする風景をつくる、整枝と誘引についてお伝えします。 ●連載「姫野流 つるバラを楽しむ12章」 八ヶ岳でバラ農場を営む姫野由紀さんが、1年間の連載でつるバラの基礎知識、広さや高さに合った品種の選び方、美しく咲かせる栽培のコツ、思いどおりの風景をつくる仕立て方などをお伝えしていきます。 姫野由紀(ひめの・ゆき) バラ栽培家 1972年、兵庫県生まれ。10歳からバラ栽培を始める。一般企業勤務を経て故村田晴夫氏のばら園のスタッフに。2012年より八ヶ岳の農場を引き継ぎ、約1000品種のバラの苗木の生産・販売、品種選びや栽培管理のアドバイスを行う。つるバラやオールドローズをはじめ古花、名花にも造詣が深い。 『趣味の園芸』2024年12月号 姫野流 つるバラを楽しむ12章「第九章 冬の整枝と誘引」より