WILYWNKAが語る、「逆にフレッシュ」なアルバムに込めた真摯な想い
ソロ・ラッパーとして、また変態紳士クラブの一員としてポップ・フィールドからコアなヒップホップ・シーンまで多方面でその才能を発揮してきたWILYWNKAが、待望の4thソロ・アルバムを完成させた。 「90’s Baby」と名付けられた今作は、90年代生まれであるWILYWNKAの音楽的バックグラウンドや彼のラッパー観を存分に感じることが出来るアルバムだ。彼がこれまで作り上げてきた音楽全てに共通する、好奇心旺盛でやりたいことは全てやろうとする良い意味での「キッズ感」は、自身のルーツである90年代~00年代のヒップホップ・サウンドの大胆且なオマージュの数々にも現れているだろう。また、歯に衣着せない「毒」を感じさせるリリックの数々や、葛藤や内面を素直に吐露した楽曲なども彼がキャリアを通して表現してきたことであり、10代の頃から変わらないスタンスだ。 だが、その基本的スタンスに変化はないかもしれないが、今作ではそれをより自然体でアウトプットすることに成功していて、そういう意味では彼のアーティストとしての成長も感じさせるという、無邪気さと成熟が共存しているのが興味深い。そんな、WILYWNKA自身も手応えを感じているという『90’s Baby』の制作背景を訊いた。 ー前作『COUNTER』のリリースから2年近く経ちますが、この2年間を振り返るとどんな期間でしたか? WILYWNKA:2ndアルバムの『PAUSE』制作後から『COUNTER』の間に自分の中の意思や気持ち的な部分がしっかりし始めて、「もっとこうありたい」とか「こういうラッパーになりたい」というイメージが出来てきたんです。で、それを『COUNTER』で表現しようと思ったけど、一回思ってやってみてもすぐにはモノにならなくて。でも、あのときはあのときでアルバム・タイトル通りのマインドやって、それはそれで自分にとっては大事な時間だった。そこから2年経ちましたけど、今作に関しては自信作で最高傑作やな、と思えるモノが出来た。だから、この2年間は大したリリースはなかったけど充実した時間だったと思ってます。ラップするのが窮屈やった時期もあったんです。「昔みたいに何も考えないでラップできてた頃のほうが良かったな」みたいに思ってしまったことがあって。それこそ変態紳士クラブとかメジャーな活動をしていく内に(仕事として)こなしてる自分もいたと思うし。でも、そうじゃないじゃないですか? 仕事なんですけど、極力仕事とは言いたくない。「仕事遊び」みたいな。やりたいことやのにやらされてる、みたいになるのはサブいと思ってて。そういう意味では、今回はホンマやりたいことをめっちゃ楽しくやれた。去年の6月ぐらいに先行シングルの「Excuse Me」が出来たとき、「あ、何か分かったかも」みたいな気持ちになりました。ラップのノリも、トラックの音楽的な部分も自分のリリックも。あのリリックに関してはスゲェ俺っぽいというか、昔からあんなこと言ってるヤツなんですけど(笑)、アレを自然体でやったっす。「Excuse Me」が出来た時点では今作の収録曲のほとんどが出来てたわけではないけど、アレが出来た瞬間「あ、アルバムもう作れるな」という手応えを感じた。1stアルバムの頃まではそれが余裕で出来てたんですよ。 ーキャリアを重ねていく上で増えてきた責任感のようなものが影響している? WILYWNKA:自分が楽しく好きなトラックにラップするだけっていう、ホンマ単純なことでしかなかったんですけど。やっぱり大阪の片隅の、なんてことないクソガキが音楽を始めて、東京のレーベルと契約してワンマン・ライブまでするようになって、自分のライブに来てくれるお客さんがいるということを認識し始めたら、良くも悪くも気張ってしまっていた部分があった。勝手な責任感なんですけどね。もちろん、バズりたいと思う感覚はないわけじゃないけど、バズのために音楽はやっていない。自分にはやりたいことや言いたいことがあってラップを始めたはずなのに、大人になってお金を持ち始めて、もっとお金欲しいってなって……もちろんお金は欲しいですけど、「お金が欲しくてバズりたいからラップしてる」ってなったらバズに取り憑かれてると言うか……やりたいからやってるだけで今はもっと自分に忠実。意外とシンプル。