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細かいことは気にさせない「キムタクマジック」の予定調和

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デイリー新潮

 コロナ禍で生活や価値観が変わった人も多い。今まで政治を一切語らなかった友人が熱く吠えるようになった。虚言・暴言・戯言しか吐かない大臣や知事、元知事ばかり映るのが耐え難く、テレビ離れが加速した人も。元受刑者のYouTubeにハマった男もいれば、BSの韓国ドラマにハマった男もいる。激痛なYouTubeを始めた人も。海外ドラマにハマり、日本ドラマの幼さに絶望した人もいれば、Amazonのパントリーを活用する人も増えた。服や靴を買わなくなった女も。大掃除や模様替えをしたり、食える草を栽培し始めた人もいる。ほぼ私のことだ。

 ドラマ視聴も、コロナ以前のような熱が戻ってこない。ひと通り観てはいるが、「早く続きが観たい!」と思う作品は少ない。これは私の心の問題か、コロナのせいか、Netflixのせいなのか。  このように前置きが長いときは、たいていそのドラマに興味が薄い。スタート時期があまりにまちまちで、今書ける手頃な作品が他にないため、これを。「BG~身辺警護人~」(テレ朝)。  主役は木村拓哉。所属していた会社を啖呵きって辞めて、自分で会社を始めちゃう。「寄らば大樹の陰」のイメージが強くて、人望が厚いようには到底見えなかったが、後輩の斎藤工がもれなくついてきたお陰で、ちゃっかり「夏の風物詩・バディモノ」に。その割に、工の出番が少なくて不満だ。

 前作では政治家だセレブだの上級国民や富裕層相手の身辺警護だったが、規模縮小に伴い、案件も格下げ。いいじゃん。縮小化。庶民派。いや、ちょ待てよ。庶民じゃねーわ。1時間1万円の身辺警護は、時給で言えば医者クラス。とはいえ、経営は大丈夫か。経理も決して得意には見えず。毎回結構な負傷をしているが、保険に入ってる? 工に給料ちゃんと払える? 育ち盛りの息子(田中奏生(かなう))を育てていくのに大丈夫? 給付金もらえた? なんてコロナ禍だからこその余計な心配が先に立っちゃって。ま、そんなこんなもキムタクマジックがあれば大丈夫。  20年引きこもりでニート(この手の役が秀逸な岡田義徳)の依頼まで受け、社会復帰と家族再生までお手伝い。立ち退きを強いられたカレー屋(名取裕子)の抵抗にも加担して、ボディガードというより便利屋。人助けと世直しのお約束。ま、それもキムタクマジック。  顔の小さな工と並ぶと遠近感が狂う。妙に走りにくそうだし、キムタクの靴が大きい? ま、そこ(底)もキムタクマジック。折角の間宮祥太朗と菜々緒の扱いが雑なのもキムタクシフト。  コロナ禍で短縮を余儀なくされたものの、テレ朝シリーズ化の関門「一話完結」「高齢者向けの予定調和」をきっちりクリア。他局の続編モノと比べればアップデート感もあり、数字も獲った。フォーマット次第ではシリーズ化する懸念も。「刑事7人」のように役者を取っ換え引っ換えしてまで長期シリーズ化しそうな勢い。しかし、春夏のテレ朝は古参ジャニーズシフト。若手は日テレが独占状態だし。去る者も増殖中だが、帝国の覇権はまだまだ続くのか。 吉田潮(よしだ・うしお) テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。 「週刊新潮」2020年8月6日号 掲載

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