バントの名手の名を冠した少年野球大会なのに「バント禁止」?元ヤクルトスワローズの宮本慎也さんに理由を聞いた プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(1)
プロ野球のレジェンドに、現役時代やその後の活動を語ってもらう連続インタビュー「名球会よもやま話」。第1回は元ヤクルト内野手の宮本慎也さん。歴代3位の408犠打を記録したバントの名手は、自身の名がついた少年野球大会でバントを禁じている。その理由とは。(共同通信=栗林英一郎) ▽この子たちは本当に面白いんかな 僕が大会長を務める小学生対象の「宮本慎也杯 学童軟式野球大会」は2016年の第1回からバントを禁止した。自分も小学校の時、たぶんバントは5回もしたことがない。息子の少年野球に携わる中で「待て」だとか勝利至上主義だとかで、思う存分バットを振ることが制限されているのを体験した。バントであったり背が小さな子が2ストライクまで打てなかったり、そういうのを数々見て「この子たちは本当に面白いんかな」と、すごく感じた。僕が冠の大会ができるとなった時、このルールだけは絶対に入れたかった。 小さい時からバント、右打ちをしてもプロ野球選手にはなれない。大谷翔平や柳田悠岐、鈴木誠也を目指してほしい。プロで脇役の選手にしても、子どもの頃からずっとそうだという人はいない。ましてや小学生なら、この先に体がどれほど大きくなるか分からない。中高校生になればバントもやらされる。せめて僕の大会ぐらいはバットを思い切り振ってほしい。
19年頃に球数の話も出てきたので、いち早く大会では70球に制限して、けがのリスクを減らした。たくさんの子が投手になれるチャンスもある。野球をやり始めたら、みんなピッチャーをやりたいし、ホームランを打ちたい。そういうのに近づけたらなと思った。楽しくやってもらいたいのが基本。その中で勝ちたいという思いは本人から生まれてくるもの。大人優先というのは良くない。 指導者がしかることもある。打てなくて怒るとかエラーして怒るのは駄目だが、チームとしてみんな一生懸命走ろうとか、守備のカバリングをちゃんとしようとか、そういうのを怠った時、しからないのは僕はまた違うと思う。めりはりの付くような大会になっていけばいい。 ▽野村監督との出会いが全て 1995年にヤクルトへ入団した際、最初に野村克也監督に出会ったのが、現役を19年間やれた要因の全てだと思っている。途中で会っていたら、選手としていろんなものが出来上がっていて、話を聞く素直さがどれだけあったか分からない。野村さんには「おまえがプロで生きていく上では、こういうふうにやっていかないといけないんだぞ」という方向性を、ちゃんと示していただいた。既にヤクルトは強くて、僕に求められたのは完全に脇役だった。作戦面、要するにバント、ヒットエンドランとか右打ちとかの自己犠牲。バッティング技術がどうこうというよりは、そういう部分の方が大きかった。