Yaffle、iriら手がける人気音楽プロデューサーが探求したいこととは:インタビュー
グルーヴは音符よりも音色
――コンセプトはどう説明を? フルアルバムは、前作シングル「Lost, Never Gone feat. Linnea Lundgren」と同名のものになる予定です。物を失ったり、友人と疎遠になったり、失恋などで喪失を体験しても、それまでの自分は変わらない。だから喪失したものは自分の内面で影響を持ち続ける、生き続けるという想いがありました。人は自分の人生を美化したり、忘れたりして修正していきます。それは生きるために必要なことですが、僕は失くしたものが心に語りかけてくる気がするんですよ。 これは普段から考えていることです。言語化するのが得意ではないので、浮かんでは消えていきますが、それを前作でLinneaがぴたりと「Lost, Never Gone」という英詞にしてくれました。ネガティブな意味ではなく「喪失したことを悲しむ必要はない」という話で、それを毎回コライト相手に説明しました。 ――今回はフォーキーな質感の前作とは、また違うサウンドですね。 曲はパリのストラスブール=サン=ドニのAir B&Bのキッチンバーで、朝から遊びの延長で作ったものです。USっぽい音まではいかないですが、前作よりもアグレッシブな音像にしたいとは思ってました。音色は僕が行った場所は響く建物が多かったので、それに引っ張られた気もしています。泊まった所も古くて天井が高かったし、録ったスタジオも響く空間でしたから。 今時のプロデュース作業は5割くらいが音色選びです。ロックバンドなら何とかなると思いますが、エレクトロみたいな今のポップスは譜面にしても単純なループであまり意味がない。グルーヴを左右するのは音符よりも音色なんです。「A l’envers feat. Elia」のピアノは音のイメージが先にあって、それに近い楽器を探していきました。ゼロから1にしていく時は「この音かっこいい!」と直感で選ぶこともありますが、1から10にしていく作業の時はイメージに当てはめていくことが多いです。 このイメージには普段から聴いている音楽や、これまで一緒にやったミュージシャンからの影響があると思います。例えば以前、韓国の方と仕事をして「こんなキツい音を使うのか」と思いましたが、全体で聴くと意外に収まりよくてパンチもあるなと。個人的に強めの音を使う人生じゃなかったので勉強になりました。