「飛鳥」で地域創生・文化応援を|篠田哲郎×小山薫堂スペシャル対談(後編)
船は「文化を和える器」
■船は「文化を和える器」 小山:クルーズが日本でこの先、成功していく秘訣としては、僕はまず行政との関係性が重要だと思うんです。現状だと漁業権が強すぎて、観光のための港がなかなかない。それをまず整備する必要があります。消費者側の目線で言えば、この数年間で急激にクルーズに対する関心が高まっていて、“大衆の憧れ”になることにより、富裕層が乗りたがる。循環的には船旅というのはこれから間違いなく流行ると思います。 篠田:日本のクルーズ人口って0.3%程度で、これはドイツの20年前と同じぐらいなんです。そしていま、ドイツのクルーズ人口は3~4%になった。20年で10倍です。ではドイツと日本で何が違うのかというと、船がなかった。規制も当時は厳しくて、クルーズが盛り上がらなかったんです。いまは海外の船がどんどん日本に来て、ディズニークルーズも発表されて、必然船に乗る人が増えている。船旅自体に魅力があるので、一度知ってしまえば、何度でも楽しむ方々が増えていくことは間違いありません。 小山:今回の大阪万博では僕の企画したイベントを「飛鳥II」で開催します。日本の食は北前船とか東廻海運などでつくられている部分がある。例えば北海道産の昆布が北陸経由で京都に入ってきて、関西が出汁文化になったとか。船は日本における「文化を和える器」だった。その現代版でとも言えるものを、「飛鳥II」でやれるのが楽しみです。 篠田:僕らにとっても望外の喜びです。地元の良いものを使って、ぜひ素敵なイベントにしましょう。 ■今月の一皿 筆者の好きなハムを使用し、「飛鳥クルーズオリジナルドライカレー」に合うコールスローを料理人ゴローが発案。 ■Blank 都内某所、50人限定の会員制ビストロ「blank」。筆者にとっては「緩いジェントルマンズクラブ」のような、気が置けない仲間と集まる秘密基地。 小山薫堂◎1964年、熊本県生まれ。京都芸術大学副学長。放送作家・脚本家として『世界遺産』『料理の鉄人』『おくりびと』などを手がける。熊本県や京都市など地方創生の企画にも携わり、2025年大阪・関西万博ではテーマ事業プロデューサーを務める。 篠田哲郎◎1968年、京都府出身。92年、日本興業銀行に入行。97年より海運業界を担当。2007年、初の船舶投資ファンドを設立し、共同創業者を継ぎ、19年より現職。同年「飛鳥」による地域創生を主眼に郵船クルーズに資本参加、代表取締役を兼務。
小山 薫堂