長引く痛みについて適切に知って 慢性痛の専門家がYouTubeで毎週「痛み塾」をアップ
慢性痛の患者は約2000万人、十数兆円の損失
慢性の痛みに悩まされている人は実はとても多い。 「およそ2000万人とされていますが、実際に医療行為を受けている人はその3分の1程度だろうと推測されています。働けなくなったりする社会的影響として、数兆円~十数兆円程度の損失があると計算されています。慢性の痛みを放置しているのは社会的な問題です」 この動画が適切な理解につながり、良い影響が出ることを期待する。 「動画での啓発によって、患者・家族が救われるだけでなく、慢性痛患者にどう対処してよいか解らない多くの良心的な医療者も楽になると思われます。さらに、医療費の有効利用も行え、さらには慢性痛による経済的損失も大きく減る可能性があります」 困るのは、こうした症状のある患者がどこに行けば適切な医療が受けられるのかがわからないことだ。 「 慢性痛をしっかりと診療できる医療者の数は極めて限られています。厚労省研究班参加の医療機関ならほぼ間違いはありませんが、それ以外にもしっかりとやっている医療者の方は多くいます」 「やはり、患者・家族側がある程度以上の知識をもって、医療者を『見分ける』必要があると思います」 その見分ける目を持ってもらうためにも、動画を活用してほしい。そして、今、慢性の痛みに苦しんでいる人にこう呼びかける。 「慢性痛の多くは生活習慣と深い関係があります。したがって特効薬はありませんし、痛みを完全に治すこともまずできません。一方で、生活習慣を変えることで多くの場合、生活に支障のない程度まで良くすることができます。ぜひ今後も公開していく動画を参考になさってみてください」 【北原雅樹(きたはら・まさき)】 横浜市立大学附属市民総合医療センター ペインクリニック内科 診療部長・診療教授、公認心理師 1987年3月、 東京大学医学部卒業。帝京大学医学部附属市原病院麻酔科、同大帝医学部附属溝口病院麻酔科助手を経て、1991年~96年米国留学(Resident of Anesthesiology, University of Washington Medical Center、Senior Fellow of Clinical Pain Service, University ofWashington Medical Center)。 1996年8月に帰国後、帝京大学医学部附属溝口病院、2006年7月、 東京慈恵会医科大学ペインクリニック診療部長、2009年4月、 東京慈恵会医科大学ペインクリニック診療部長、麻酔科准教授を経て、16年4月 横浜市立大学附属市民総合医療センター麻酔科特任教授(兼任)。17年4月、 横浜市立大学医学部麻酔科学講座准教授(ペインクリニック担当)、20年4月より現職。 世界で初めて設立された痛み治療センター、ワシントン州立ワシントン大学ペインセンターで慢性痛診療について学ぶ。専門は、通常の治療法では効果が少ない難治性慢性痛で、精神科医、看護師、公認心理師、理学療法士、作業療法士、鍼灸師などとのチーム医療で診療にあたる。
岩永直子