聖火リレーまで1カ月 ランナー「一筋の光を」複雑な思いも
トーチの炎が、閉塞感に覆われた社会を照らす一筋の光になると信じたい-。新型コロナウイルスの収束が見通せない中、1年越しの出走を控えた県内の聖火ランナーたちは、複雑な思いを抱えながらも希望を捨てず、静かに準備を進めている。 県トライアスロン協会副会長の柿塚晋也さん(41)=杵島郡江北町=は高校3年だった1998年、長野冬季五輪の聖火リレーでサポートランナーとして佐賀市内を駆けた。東京五輪の聖火ランナーに決まり、当時一緒に走った男性から「新聞で見ました」とSNSでメッセージが届き、「思わぬ“再会”がうれしかった」と話す。 ただ、新型コロナの感染拡大で東京五輪は延期に。周囲からは「本当に走らるっと?」と心配された。それでも「こちらが望んでどうなる訳でもない。走らせてもらうだけでありがたい」と1年後を見据えてきた。 大阪府で公道でのリレーが中止となるなど、予断を許さない状況が続くが「スポーツの力で社会の雰囲気を少しでも明るくできれば。子どもたちにオリンピックを身近に感じてもらう機会にしたい」と話す。 北村醤油醸造の3代目社長で聖火ランナーに決まっている北村好広さん(44)=神埼郡吉野ヶ里町=は「待ち遠しかったという思いの一方、『本当にあるのかな』という不安もある」と胸の内を明かす。 新型コロナウイルスの感染対策のため、沿道での観覧はマスクの着用や密を避けることが求められる。北村さんは「地元の人とわいわい笑いながら走ることができないのはすごく残念」としながらも「ネット中継を見ている人が明るい気持ちになれるよう、笑顔で走りたい」と誓う。(古川公弥、西浦福紗)