放課後児童クラブの改修、松江だけ全額負担に業者から不満の声
共働きやひとり親家庭の小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)の開設や改修に伴う整備費を巡り、松江市内の民間事業者から不満の声が上がっている。市は、島根県内で民間の児童クラブがある自治体では唯一、国の助成制度を採用しておらず、事業者が全額負担する必要があるためだ。公設に比べて柔軟な対応が可能な民間の児童クラブの利用ニーズは年々高まっており、不公平感の解消を求めている。 ◇ 「もっとたくさんの児童を受け入れたいが、場所がない」。松江市東出雲町意宇東3丁目で34人の小学1~3年生が在籍する「みつきっこクラブ」を運営する社会福祉法人の増岡年子・業務執行理事はやるせない思いを口にする。 共働き世帯の増加で利用申請が増えつつあるが、1999年開設の施設は手狭で、冷暖房機器やトイレも間もなく改修時期を迎える。現在は対象外にしている4年生以上も受け入れたいが、改修には数千万円規模の支出が避けられない。利用料に転嫁する訳にもいかず「ただでさえ収益が上がらない中、自力での改修は難しい」と打ち明ける。
◇ 国の助成制度は、民間事業者が児童クラブを開設、改修する場合、国、県、市町村が上限2800万円の範囲内で、整備費の87・5%を支援する仕組み。事業者の負担は12・5%に抑えられ、整備費が2千万円だった場合、250万円の負担で済む計算になる。 県内では現在、出雲、大田、安来の3市と隠岐の島町が導入する一方、松江市は全小学校区に設置した公設クラブの利用者減を防ぐためとの理由で採用せず、民間事業者への支援を見送ってきた。 ◇ こうした中、市内では2011年以降の10年間に民間事業者が計26カ所の児童クラブを開設。公設と違って受け入れ時の校区制限がなく、習い事への送迎や、預かり時間の延長といった対応が可能なため、保護者の利用ニーズは高い。3人の息子を育てる母親(35)は「送迎もしてもらえるので、とても助かる」と話す。 市内の児童クラブの待機児童数(20年7月時点)は県内で2番目に多い39人に上る。事業者負担が軽減できれば、受け入れ枠の拡充や利用料の軽減につながる可能性がある。市教育委員会生涯学習課の寺本恵子課長は「民設クラブの利便性がいいという声があるのは確かだ。時代の流れを踏まえて支援の在り方を検討していく」と話した。