「背伸び消費」が原因で離婚⁉年収1000万円でも「貧乏に陥る」落とし穴。
「高給取り」なイメージから陥る「背伸び消費」
しかし、実際どのくらいの生活水準なのでしょう。総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編 二人以上の世帯」から1ヵ月あたりのエンゲル係数(消費支出のうち食料が占める割合)を比べてみると、平均年収に近い400~450万円世帯は27.1%、1,000~1,250万円世帯は22.1%です。一般的に、エンゲル係数が高いほど生活水準が低いとされるため、やはり年収が高いほど余裕のある様子がみてとれますね。 また、教養娯楽面でも差がある様子がうかがえます。宿泊料やパック旅行費を含む「教養娯楽サービス」では、年収400~450万円世帯が月平均14,839万円であるのに対し、1,000~1,250万円世帯は31,547万円と、毎月倍以上お金をかける余裕があるようです。 しかし、余裕があるからといって陥りやすいのが「背伸び消費」。高所得であるという意識から自然とよりよいものに手を伸ばしたり、プチ贅沢を積み重ねてしまったりするケースも少なくないようです。場合によっては、それで貯蓄がままならなくなることも……。
背伸び消費が原因で離婚したケースも
30代のAさん(女性)は20代の頃から会社を経営し、収入も1,000万円以上。20代で同い年の男性と結婚しました。Aさんは都内の花火が見えるタワーマンションに住み、独身時代は余裕のある生活を送っていたようです。 「とはいっても、こだわったのは自宅の場所くらい。服や持ち物にお金をかけたいタイプではないので、浪費はしていませんでした。若かったので、貯蓄はそこまでなかったですが」 しかし、それを変えることになったのが夫。低年収だった夫は結婚を機に会社をやめ、フリーのコンサルタントを名乗るように。夫の仕事には口を出さないAさんでしたが、夫は「人脈を広げるために交流会に行く」「よりよいスーツを」「話題のあの店に行っておかないと」などと、どんどんお金を使うようになっていったそう。ちょっとした日用品も高価なものを選ぶようになった夫は、気づけば1年で300万円以上を浪費。Aさんの貯金を切り崩し、さらに夫自身にはほぼ収入がない状態だったといいます。 「私も結婚に浮かれていた部分があったけれど、彼は仕事といってほとんど遊んでいただけ。私よりはるかに高いスーツを着て『君は年収1,000万円あるんだから、このくらいで怒らないで』といわれたとき、すっかり熱が冷めました……」 Aさんは夫と貯蓄や今後のことについて話し合ったものの、結局認識の溝は埋まらず、結婚して1年あまりで離婚となったそうです。 「子どものことも考えていたけれど、彼は貯蓄を切り崩すことにも抵抗がなく、この人と一緒では破産する将来しか見えませんでした。彼は離婚後にすぐ別の女性経営者と再婚したので、お金がないと生きていけない人だったんだと思います。早めに決断してよかったですよ」
年収ではなく支出とのバランスが重要
もちろん年収が高ければ、よいものを購入できたり、よい家に住んだりすることができるでしょう。しかし、大切なのは支出とのバランスです。たとえ配偶者が高給取りでも、調子に乗りすぎてしまうのは考えもの。世帯年収が上がってもその基本を忘れずにいなければ、あっという間に貯蓄はなくなり「高収入貧乏世帯」に陥ってしまいます。年収に関わらず、しっかり自分たちの収支バランスを認識し、計画的に日々を過ごしていきたいものですね。 【参照】 国税庁「平成30年分 民間給与実態統計調査」 総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編 二人以上の世帯」7-1貯蓄・純貯蓄・負債現在高階級,年間収入階級別
古谷 梨子