日本は女性差別を撤廃すべきだが、外圧で皇室典範の改正を求めるのは間違い
<日本政府に対する国連の女性差別撤廃委員会の勧告には強く賛成できるところも、反対したいところもある>
日本は1985年に、女性に対するあらゆる形態の差別を撤廃する条約(女性差別撤廃条約)を批准した。それ以来、日本政府は国連に対し、定期的に実施状況の報告書を提出することになっている。【西村カリン(ジャーナリスト)】 今年10月末、9回目の日本政府報告に対して、国連の女性差別撤廃委員会が総括所見(勧告)を発表した。委員会の質問への政府の回答を読んだところ、評価できるところがあるのは事実だが、違和感のあるところもあった。同じように、委員会の総括所見の中には強く賛成できるところもあれば、反対したい部分もある。 ここ数年の日本で、法改正によって女性差別問題が改善されたのは、女性にのみ設けられていた再婚禁止期間の廃止や、レイプが合意のない性行為と定義されたことなどがある。そういった進歩は委員会も評価しているが、今は全く進んでいない部分に注目すべきだろう。 1つは選択的夫婦別姓。日本政府は「国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら、司法の判断も踏まえ、さらなる検討を進める」と強調しているけれど、与党の自民党は具体的に何もしてこなかった。10月の総選挙の結果、野党が強くなり、ようやく進展が見られそうだが、やはり動きは遅い。
「女性の体の管理」という問題
同じように、「衆議院議員および参議院議員の候補者に占める女性の割合を2025年までに35%とすることを努力目標として念頭に置きながら、政党に対して、自主的な取り組みの実施を要請しています」と政府は強調する。だが残念ながら、来年にその目標を達成するのはもう無理だろう。今回の総選挙では女性の候補者も当選者も過去最高だったが、それでも女性候補者の比率は23.4%だ。女性の国会議員が増えない限り、女性への差別問題は完全に理解されず、解決もされないだろう。 特に女性の体の管理問題への対応が難しい。例えば、委員会は人工妊娠中絶における「配偶者の同意」という要件の廃止を求めている。私もこれに大賛成だ。現行法では、妊娠した女性は配偶者の同意がない限り中絶ができない。事実上、最終判断をするのは女性ではなく男性だ。 これの何が問題かを男性の政治家はあまり理解せず、気にもしないだろう。むしろ少子化のなか、中絶をしやすくすると出生数がさらに減ってしまうと彼らは恐れるかもしれない。 記者会見で林芳正官房長官に、配偶者の同意の廃止について質問したところ、本人はすぐに回答ができず、9人いる男性官僚の1人が渡すメモを待ち、当たり障りのない回答を読み上げた。男性政治家にはそういった質問の意義はなかなか通じないのだと思った。同じように、緊急避妊ピル(アフターピル)へのアクセスの問題もやはり女性政治家が取り上げないとなかなか進まないと危惧している。そういう面を考えれば、国連の委員会の指摘は重要だ。