「誰にでもできるバスケットをさせてしまった」前田顕蔵ヘッドコーチの後悔が呼び込んだ秋田ノーザンハピネッツのバウンスバック
自分が『秋田らしさ』をコート上で表現し、伝えたい
勝利を追求する。選手たちのステップアップをフォローする。指揮官であり指導者でもあるヘッドコーチにとって両者の両立は永遠の命題だろう。第1戦後にベンチメンバーを積極起用できなかったことを悔いた前田ヘッドコーチに、それができなかった理由を問うた。前田ヘッドコーチは次のように答えた。 「『置きにいった』という感じですかね。 僕がしないといけないのは、しっかり『秋田の色』を出すことなのにもかかわらず。さっき選手たちにも言ったんですが、40分間、60試合、どうやって全員で繋いでいくか、どうやって他のチームには出せない強度を出せるかを考えて今年のロスターを作ってたはずなのに、『勝たないといけない』とか『経験値がない』とか、いろんな要素を考えすぎてしまって、安牌に行ったら全然うまくいかなかった。そういう自分の弱さが出た試合だなと思いました」 今シーズンの秋田は、先発が固定されがちだった昨シーズンと異なり、選手のパフォーマンスや相手との相性に応じてスターターを積極的に切り替えるスタイルをとろうとしている。 第2戦後の記者会見に登壇した小栗は、ウォーミングアップを終えてロッカールームに戻ってきたときに初めて先発起用を知ったと明かし、そのときの心境について「やるだけかな、と思いました」と述懐。「いつ出てもいいように毎日毎日準備しているので、それが第1クォーターの結果にあらわれたのかなと思います」と、新しいスタイルがポジティブに働いていることを感じさせるコメントを発した。ちなみに、試合前のハドルの後には元田と「ベンチから出てくるメンバーに良い刺激を与えたいね」「やってやろうぜ」と言葉をかわしたという。 古川孝敏、保岡龍斗、長谷川暢といった長くチームを牽引した選手たちの退団を受け、秋田は新しいフェーズを迎えている。とは言え、在籍6シーズン目を迎えた前田ヘッドコーチのもとで目指すチームカルチャーは不変だ。 特別指定時代を含め在籍3シーズン目となる小栗は「古川選手、長谷川選手、保岡選手が抜けた中、自分が『秋田らしさ』をコート上で表現し、伝えるという責任と自覚を持ってプレーしている」と話し、指揮官も「なぜ僕がこの仕事をさせてもらえているのかを常に考えている」「僕自身も成長しなければいけない」と力を込めて言う。自分たちにしかできない、自分たちだからこそできるバスケットを日々追求し、具現化していく、秋田の新しいシーズンが始まった。
青木美帆