【チャンピオンズC みどころ】絶対王者が有終の美を飾るか それとも新たなダート王が生まれるのか
真のチャンピオンになるために
ジャパンCダート時代を含め、今年で25周年を迎えたチャンピオンズC。 下半期のダート最強馬決定戦として定着した一戦だったが……過去24年の1番人気の成績は[9・6・3・6]と、意外にも勝率は4割を切っている。 【ガチ予想】ダート最高峰の競走「チャンピオンズC」をガチ予想!キャプテン渡辺の自腹で目指せ100万円! 同じJRAのダートGⅠであるフェブラリーSは2000年以降、1番人気馬の勝率は52%という高い数値を残しているのと比べると大きな違いがある。 そもそも、ダート王の政権は決して長いものではなく、過去の王者は現役最後のレースで勝っていることはまれ。 実際にダートGⅠで5勝以上を挙げた歴代の王者たちの現役最後のレースを調べてみると、その成績は[2・3・1・7]。 勝った2頭はいずれも地方交流GⅠでのもので、ジャパンCダート、チャンピオンズCで引退レースを飾った馬はいない。 群雄割拠な状況が続く昨今の日本のダート戦線。以前よりもレベルが上がったがゆえに、かつてのチャンピオンがチャンピオンベルトを巻いたまま有終の美を飾るというのはかなり難しいことになっている。 そう考えると現役最強のダートホース、レモンポップはどうなるのだろうか。 ゲートが開いた瞬間、素軽いスピードを武器にスッと好位へ付けて、直線でも後続馬を寄せ付けずに押し切るというどこか清涼感がある走りでデビュー以来、連対を外すことなくオープン入り。 そしてその勢いのままに昨年のフェブラリーSを制覇。そのスピードには誰も付いてこられず、新たなダートの王者となった。 続くドバイゴールデンシャヒーンでは10着に大敗したが、帰国緒戦となった南部杯ではスタートから逃げの手を打つと、後続馬を寄せ付けることなく2着馬に10馬身もの大差をつける圧勝。 まるで雷に打たれたかのような衝撃をファンに与えた。 その勢いのまま迎えた昨年のチャンピオンズC。初めての1800m、大外枠からのスタートという不利を感じさせない圧倒的な逃げを打ち、後続を寄せ付けることなく押し切り、JRAのダートGⅠを同一年に制覇。 文句なしの実力を見せて2023年の最優秀ダート馬に輝いた。 自他共にチャンピオンとして迎えた今年。レモンポップはサウジCで再び世界の壁にぶつかったがさきたま杯、南部杯と交流GⅠを2連勝。 いずれもスタートから溢れんばかりのスピードを見せつけるかのような逃げ切り勝ちだった。 あれから1年。距離の壁を克服して真のダート王として名乗りを上げた中京ダート1800mの舞台で連覇を果たし、GⅠ6勝目を挙げるとともに有終の美を飾るだろうか。 そんなレモンポップを王座から引きずり下ろすとすれば、今年のフェブラリーSの覇者、ペプチドナイルか。 11番人気で迎えたフェブラリーSでは先行策から抜け出して快勝。3連単153万馬券という大波乱の主役となった。 重賞初制覇をGⅠの舞台で成し遂げたためか、その後もなかなか人気に推されることはなかったが、続くかしわ記念では2番手から動いて3着に健闘。 そして秋緒戦となった南部杯ではレモンポップと真っ向勝負の末に2着と勝ち切れなかったが、いずれも馬券圏内に入るなど、力のある所を見せてくれた。 今年に入ってからはマイル戦でしか走っていないとはいえ、過去にはベテルギウスなど1800m以上のレースでも5勝をマーク。 2度目の対決となるレモンポップを負かして、真のダート王として君臨したい。 レモンポップもペプチドナイルもGⅠ初挑戦で勝利を飾ったが、その頂にようやく届いたばかりの馬もいる。 今年のJBCクラシックで7度目となったGⅠ挑戦を実らせたウィルソンテソーロは2つ目のタイトルを虎視眈々と狙っている。 昨年のかきつばた記念で重賞初制覇を飾って以来、交流重賞ばかりを3連勝。 初のGⅠ挑戦となったJBCクラシックは5着に終わったが、チャンピオンズCは12番人気の人気薄ながら直線で追い込んで2着に激走。 その勢いのままで挑んだ東京大賞典は同馬主のスターホース、ウシュバテソーロに次ぐ2着に入り、次代のダート王候補として大いに注目された。 だが、今年に入ってからウィルソンテソーロは勝ち星から見放された。 5歳緒戦となったフェブラリーSでは2番手追走が仇になったのか、直線で伸びずに8着に敗れると、ドバイワールドCでは世界の強豪相手に4着に奮闘。 帰国緒戦として選んだ帝王賞はキングスソードに届かず、確勝を期して挑んだ韓国のコリアCはまさかの2着。気が付けば1年以上も勝ち星から遠ざかってしまっていた。 初めてGⅠに挑戦して、ちょうど1年後となった今年のJBCクラシック。 小回りな佐賀競馬場のコースレイアウトに対応するようにスタートから好位に付けていくと、3角過ぎには先頭に立つという強気なレース運びで押し切り、念願のGⅠ制覇。佐賀出身の鞍上、川田将雅は故郷に錦を飾ってみせた。 JBCクラシックとチャンピオンズCの相性が悪いことは知られていて、過去にこの2レースを連勝したのは2007年のヴァーミリアンだけ。 それだけに厳しく感じるのは確かだが、切れ味鋭い末脚に好位から動ける柔軟性が備わった今なら突き抜けても不思議はない。昨年は穴を開けたが、今年はチャンピオン候補として王者の走りを見せたい。 絶対王者が有終の美を飾るか、それとも新たなダート王が生まれるのか―― 今年のチャンピオンズCも、精鋭たちが熱い火花を散らしそうだ。 ■文/福嶌弘