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結成15周年を迎えるtacicaが直面した現実と、自分に手を差し伸べてくれた歌について

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音楽と人

tacicaのニューシングル「aranami」が6月3日にリリースされた。テレビアニメ『波よ聞いてくれ』のオープニング主題歌に起用されているこの新曲は、作品に寄り添いながら、結成15周年イヤーを新たな気持ちで駆け抜ける決意に満ち溢れている。ヴォーカル&ギターの猪狩翔一に話を聞いた。

ニューシングル「aranami」は、札幌のラジオ局を舞台に一人の女性パーソナリティが奮闘するアニメ『波よ聞いてくれ』のオープニングテーマソングとして書き下ろされた曲。札幌で結成されたバンドという縁だけでなく、猪狩翔一(ヴォーカル&ギター)がアニメの原作の愛読者であることから、アニメの世界観とtacicaの音楽性がキレイにハマった作品とも言えるだろう。しかし緊急事態宣言が発令されたことで、4月5日に予定されていたライヴも、そして本作の発売も延期されることになってしまった。そんな中、自宅にこもって楽曲制作をしている猪狩とZoomを使ってモニター越しに取材を行うことにした。彼は今、自分が歌詞に綴った言葉に自ら救われながら日々をしのいでいるようだ。生きる、ということはどういうことなのか。そんな問いが突きつけられるような世界で、この歌が心もとない毎日に寄り添ってくれるのだ。

tacicaらしさが存分に残ってる曲

――こんな形での取材は初めてかと思いますが。 「初めてですね」 ――自粛生活はどうですか? 「とりあえず今のところはやることがいっぱいあるんで大丈夫ですけど。でもきっとこれからですよね、大変なのは」 ――こういう状況だからこそ作品から感じられることについて話したいんですけど、ひとまずいつも通りに話を聞きます。まずこの曲がリリースされる経緯について教えてください。 「曲自体はタイアップに向けて作ったんですけど、実はこの原作のマンガは前から読んでいて」 ――僕はこのシングルが出るって知って初めて読んだらすぐハマって。こないだ全巻読破しました。 「ホントですか? でも面白いですよね。沙村広明っていう漫画家さんなんですけど、あの『波よ聞いてくれ』だけが異色で、他は作風が全然違ってて」 ――他は人が死にまくるらしいですけど、こっちではそんなこともなくユーモア満載で。 「もともと沙村広明さんの作品が好きで読んでたんですけど、その時はまだ『panta rhei』(註:2019年4月リリースのオリジナルアルバム)を作ってる最中で。だから1年前ですね」 ――アルバムの制作中だったんですね。 「で、そこまで手が及ばないというか、手がつけられない状態だったんです。とはいえ話をもらった段階で、ワンコーラスの弾き語りみたいな状態の曲は作ったんです。それをアルバムのレコーディングで入ってたスタジオの空き時間に、メンバーにアコギで披露したら『これ、いいじゃん』ってなって、1回アルバムのレコーディングを中断して、デモを作ったっていう」 ――じゃあこの曲はアニメの作品だったり登場人物にイメージを寄せて書いた感じですか? 「僕、沙村宏明さんの作品に出てくる女性に惹かれる部分があって、そこは意識したところでもあります」 ――(『波よ聞いてくれ』の)主人公のミナレ、めちゃくちゃ魅力的な女性ですよね。 「あと『波よ~』に関しては設定が札幌だったり実際に北海道で起こった出来事がネタになっていたり、けっこう僕らとリンクする部分も多くて。だから自然と作品は意識して作ったんですけど、結果的にはtacicaらしさが存分に残ってる曲になったと思います」 ――無理に作品に寄せて書いた感じはどこにもなくて。でも違いがあるとすれば、歌詞がより具体的になってるというか。 「なってますね。作ってから時間が経ってるぶん、自分でも客観視できるんですよ、この曲に関しては」 ――どちらかというと歌詞の説明ができない人だったじゃないですか、猪狩くんは。説明を求めたくなるような曖昧な表現も多かったし。でもこれはすごくわかりやすい。 「特にここ1年ぐらい書いてるものに関しては、そういう感じになってると思います。それはたぶん、ここ1年ぐらい弾き語りをたくさんやるようになったからで」 ――なるほど。 「弾き語りの影響がありますね。カップリングの〈象牙の塔〉も、まさにその影響があってできた曲で。というのも弾き語りをやってると、曲の作り方がいつもと違うんですよ。これはtacicaを意識しないで作ろうと思ってできた曲で」 ――弾き語りだとバンドを意識しないで作れるってこと? 「そうですね。僕の弾き語りライヴって、ほとんどtacicaの既存曲をやらないんです。やるのはいつも新曲で。だからお客さんはシンドイかもしれないけど(笑)」 ――それは単なる度胸試しなのか、猪狩くん特有のへそ曲がりなのか(笑)。 「へそ曲がりに見えるかもしれないけど、どっちかっていうと度胸試しですね。つまり弾き語り用に作った曲なんですけど、それをバンドで合わせるとすごく良くて」 ――バンド用に作った曲じゃないのに、バンドでやるとすごくいいと。 「その悔しさみたいなのを最近感じてて。ライバルがバンド、みたいな」 ――じゃあ今まではバンドを意識して曲を作ってきたわけですね。 「弾き語りっていうのは想定して作ってなかったですね。それと歌詞に関しても弾き語りをやるようになって個人の主張がすごく強くなってきてるのを自分でも感じ始めていて。そうやって弾き語り用に作った中の1曲が〈象牙の塔〉なんですよ」

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