実話を基にした“泣ける洋画”の傑作は? 珠玉の名品(5)ナチスから子供たちを救えるのか…ズシリと重い感動作
世の中には、自分には決して真似できないと思うような苦しい戦いを乗り越えてきた先人たちが存在する。今回は、実話を基にした、心が温まる洋画を5本セレクト。世界各国で、仕事や病、時には国家や迫害者とひたむきに戦った人々の真実を描いた作品をご紹介する。第5回。(文・阿部早苗)
『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』(2023)
上映時間:110分 原題:One Life 製作国:イギリス 監督:ジェームズ・ホーズ 脚本:ルシンダ・コクソン、ニック・ドレイク キャスト:アンソニー・ホプキンス、ジョニー・フリン、レナ・オリン、ロモーラ・ガライ 【作品内容】 第2次世界大戦直前、プラハではナチスから逃げてきたユダヤ人難民が厳しい生活を強いられていた。状況を目の当たりにしたニコラスはナチスの侵攻が迫る中、子供たちをイギリスに避難させるため奔走する。 【注目ポイント】 ナチスを題材にした作品の中でも、多くの命を救った人物といえばオスカー・シンドラーを描いた映画『シンドラーのリスト』(1993)が有名だ。 本作は“イギリスのシンドラー”とも呼ばれた人道支援家ニコラス・ウィントンが669人のユダヤ人児童をプラハから脱出させた救出劇と50年後が描かれた作品だ。 若き日のウィントンを演じたのは俳優でミュージシャンでもあるジョニー・フリン。物語の軸となる50年後を名優アンソニー・ホプキンスが演じている。 第2次世界大戦直前、ナチスからプラハに逃げてきたユダヤ人難民は、住まいや食料もない過酷な状況下で生活を送っていた。 この様子を見たニコラス・ウィントン(ジョニー・フリン)は、子供たちだけでもイギリスへと避難させるため同志と共に資金集めと現地の里親探しに急ぐ。ビザの発行に難をきたしつつも、次々と子供たちを列車に乗せていった。 ナチス侵攻による緊張が走るなか、とうとう第二次世界大戦が勃発。プラハの国境は閉ざされ250名の子供達が乗車していた列車は脱出不可能となる。 プラハ脱出を予定していた救済リストには約6000名にも及ぶ子供達が記録されていた。開戦とともに、残された子供達は大人と共に収容所へ。その後、チェコの収容所から生存したユダヤ人児童は約100名とも言われている。 ニコラス(アンソニー・ホプキンス)は、それから50年もの年月が経っても救えなかった子供たちのことを忘れられず自責の念に駆られる。やがて当時の子供達の記録をきっかけにテレビ番組の収録参加の依頼が来る。そこでニコラスは奇跡的な再会を果たす。 クライマックスといえる再会のシーンは、実際にニコラスによって助けられた子供達や、その家族が一部参加しているという。669名しか救えなかったと自身を責めていたニコラスが、実は6000名もの命を救ったという事実はまさに感慨深い。 今の時代も、世界では戦争が勃発し多くの子供たちが親を失い、罪のない人々が犠牲となっている。犠牲を伴わない戦争はない。それを決して忘れてはならない。 ちなみに、ニコラスの娘・バーバラ著者の原作を基に、構想やリサーチなど15年もの長い年月をかけて映画化を成し遂げた本作。是非とも史実に触れてみてはいかがだろうか。 (文・阿部早苗)
阿部早苗