Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

ビクトリアの滝と彼女のケンタッキーと涙のパスタ 車椅子トラベラー、アフリカをゆく(7)

配信

本がすき。

著書『No Rain,No Rainbow 一度死んだ僕の、車いす世界一周』で、270日間単独車椅子世界一周旅行を記した車椅子トラベラー・三代達也さん。世界一周に続ける形で、2019年秋、念願のアフリカ旅行を達成しました。その車椅子アフリカ旅行記7回目。ジンバブエに到着です!

無邪気な天使の「爆料理」 ジンバブエの空港に到着した瞬間に、ムワッとした熱気が僕を包んだ。 今回の旅で最も気温の高いこの場所は、平均で36~38度という厳しい暑さだ。 旅に出て2週間。そろそろ疲労が隠せないレベルになってきた。 宿に到着したら、そのまま街へ繰り出して食事でもとろうと思ったが、暑さと疲労でキャンセル。宿泊するロッジで食事をとることにした。 といっても、ロッジにはレストランがない。どうしようかと思っていたら、レセプションにいた女の子が「作ってあげるよ!」と言ってくれた。 いつもだと近くで食材を買ってきて、ティーボーンステーキとライスが定番のセット(約15ドル)らしいが、暑さと疲れで肉を食べきる体力がない。パスタ(ボロネーゼ)でもお願いできないか?とオーダーしてみる。 「オッケー!」と、彼女は笑顔で去っていった。 それからざっくり1時間は待っただろうか。パスタってそんなに時間かかるかな……。 不安になった僕がキッチンに向かって、パスタまだかな?と聞くと、 「あと5分でできるわよ~!」 と、笑顔で返された。 それからすぐに、キッチンで野菜を切る音や、炒める音が聞こえてきた。 きっと、僕のことをすっかり忘れてしまっていたのだろう。 さらに30分待って、空腹も極限を迎えたときに、待望のボロネーゼが出てきた。 目の前に現れたのは、日本で売っているパスタの束3つ分はありそうな量の麺に、パプリカとひき肉を炒めたミートソースがこんもり盛られた、超特大サイズの一皿だった。

ミートソースは想像と違って、肉と野菜を塩胡椒で炒めただけで、その上から自分で勝手にトマトソースをかけてくれよな!という感じ。トマトソースは人工甘味料と人工着色料のみでできたような化学的な色と味で、怖くてあまりかけることができなかった。 くぅ、食ってやるぅ!! 恐る恐る、一口。 これは、言うなれば「油そば」だ。麺が、たっくたくに油に浸っている。 どんなに気合を入れても、3割くらいしか食べられなかった。 少し経って僕の部屋に来た彼女は、 「どうだった?美味しかった?(ニコニコ)」 と言ってから、残されたパスタを見て、少しだけうつむいた。 そして、それを僕に勘付かせないように、笑ったのだ。 「あれ?あぁ残っちゃったんだね♪(ニコニコ)大丈夫だよ♪(ニコニコ)」 僕は、食べきれなかったことを激しく後悔した。 軽く仮眠を取り、少し涼しくなった夕方、街に出た。 ケンタッキーのドライブスルーがあったので、チキンを「多めに」オーダー。 そしてホテルに戻り、彼女が所用で僕の部屋に来た時に、 「昼はごめんね、外でケンタッキーがあったからさ、買ってきたんだけど……。もし良かったらもらってくれるかな?」 とチキンを彼女に渡したら、喜んで受け取ってくれた。 ところが、用事が終わっても彼女は部屋から出て行こうとしない。 「あれ?もう、用事はおわっ……」 と言いかけた瞬間、彼女は僕を正面から抱きしめ、顔を僕の首元にうずめてから、部屋を出て行った。

【関連記事】