自己効力感の低い人が陥っている「症候群」の正体…成果重視の人は、自分は力不足だと思う傾向
自己肯定感が低いことで「自分は大丈夫」「自分の将来は明るい」「未来は自分の力で拓ける」というポジティブな感情が持ちづらくなっています。そのため、自己効力感も低い状況なのです。 教育改革実践家の藤原和博氏は、子どもたちを見ていると、叱られることや失敗を恐怖するあまり、叱られないように、失敗しないように振る舞う態度が顕著になっているといいます。 親は子どもに対して「早く、ちゃんとできる、いい子」を望みます。熱心な親や先生であればあるほど、褒めるより注意することのほうが多いでしょう。すると、子どもは知らず知らずのうちに自信を損なってしまうのです。
ビジネスパーソンはどうでしょうか。これまで10年以上、多くの企業で自己肯定感を軸にした人材育成や組織開発の研修を実施してまいりました。現場で感じるのは、大人になって社会で働くようになったからといって、自信が持てるようになるわけではないということです。 むしろ、自信をなくす出来事のほうが多い中で、いかにそれを糧にリカバーして自信にしていけるかが問われています。 ■自信を妨げるインポスター症候群 昨今、ビジネスパーソンが自信を持てない要因の一つに「インポスター症候群」が挙げられています。
インポスター症候群とは、自分の能力や実績を認められない状態を指します。仕事でうまくいっても、周囲から高く評価されても「これは自分の実力ではなく、運が良かっただけ」「周囲のサポートがあったからに過ぎない」と思い込み、自己を過小評価してしまう傾向のことです。 インポスター(impostor)は詐欺師、ペテン師を意味する英語です。仕事でうまくいっても自分のキャリアは“まがい物”だと後ろめたく感じて、自分には能力がないと不安に感じるのが特徴です。
組織行動学のアンディ・モリンスキー教授は著書の中で、スターバックスの会長、社長、CEOを歴任したハワード・シュルツは、「CEOに就任するすべての人が不安を感じていて、自分がこのポジションにふさわしいという自信を持っている人はめったにいない」と述べています。 心理学者のキャロル・ドウェックによると、この症状に悩む人は、成果を重視する人が多いといいます。成果重視の人は、自分は力不足だという気持ちになる傾向があります。失敗すると自己の限界を強く感じてしまうため、自分はこの仕事にふさわしくないという懸念が増幅し、自信を喪失するのです。