ユネスコ無形文化遺産登録2年「綾子舞」のいま 学習の子供増も 少子化で継承にハードル
新潟県柏崎市で約500年の歴史を持つ踊り「綾子舞(あやこまい)」。国連教育科学文化機関(ユネスコ)が綾子舞を含む国内41件の風流踊(ふりゅうおどり)を無形文化遺産に登録してから30日で2年を迎える。遺産登録を契機に全国的に注目されるようになった一方、人口減少や少子化が進む中でいかに伝承者を確保するかが大きな課題になっている。綾子舞のいまを追った。 【写真】ユネスコの無形文化遺産登録が決まり、万歳をする新潟県柏崎市の桜井雅浩市長と綾子舞関係者 ■高い芸能価値 綾子舞は、歌舞伎の始祖とされる出雲阿国(いずものおくに)の一座などが踊った女歌舞伎の面影を色濃く残す。芸能史上極めて価値が高いとされ、昭和51年に国の重要無形民俗文化財に指定された。 その綾子舞は3つの芸能からなる。女性数人が赤い布をかぶり、扇を振りながら優雅に踊る「小歌踊」、男性1人がユーモラスな歌と囃子(はやし)に合わせて舞う「囃子舞」、2人以上の男性で演じる「狂言」の3つを総称して綾子舞と呼んでいる。 起源については、戦国武将の上杉房能(ふさよし)が1509年、部下の長尾為景(上杉謙信の父)に追われ自害した際、房能の妻・綾子がこの地区に逃れて舞を伝えたなど諸説ある。 かつては柏崎市の南西に位置する女谷(おなだに)地区の4つの集落で受け継がれてきたが、一部は途絶えてしまった。今は下野、高原田(たかんだ)という2つの集落の保存会がその歴史を守り続けている。 ■伝承の危機 最大の課題は、人口減少や少子化が進む中、伝承者をいかに確保するかだ。 同市の西巻康之副市長は「綾子舞は伝統が絶たれるのではないかという危機の連続だった。無形文化財の綾子舞は人から人に伝えることでしか保存できない」と話す。 伝承者を確保するための取り組みの一つが、昭和45年以降、地元・女谷地区のの小中学校でスタートした「伝承学習」だ。その後、同地区の小中学校が集落の過疎化により閉校となり、伝承学習は、市街地に近い市立新道小と南中に特設クラブとして引き継がれた。 令和6年度の伝承学習には、同小41人、同中24人の計65人が参加。同市教育委員会の宮山和則博物館館長代理は「かつては参加者が40人台のときもあった。増えたのはユネスコ遺産登録の効果だろう」とみる。