変異株出現による価格急落で原油価格対策は空振りか
バイデン政権発足が原油価格高騰の一因
仮にそうした展開となれば、米議会の民主党議員の間でOPECのカルテル体制を標的にした石油生産輸出カルテル禁止(NOPEC)法案を成立させようという機運が高まる可能性がある。米国とOPECプラスとの間での全面戦争に発展するのである。 2020年の急激な石油価格暴落を受けて、当時のトランプ大統領は、米国のシェールオイル業界を救うためサウジアラビアとロシアに働きかけて大幅な減産を引き出した。その米国が、今度は増産を要求していることに、OPECプラスは大いに戸惑い反発しているだろう。 そもそも、地球温暖化対策に批判的なトランプ政権が続いていれば、原油価格の上昇を受けて米国のシェールオイル業界は追加投資による増産に直ぐに動いていただろう。その結果、原油価格は今の水準まで上昇しなかった可能性がある。脱炭素を強く推進するバイデン政権が発足したことが、原油価格高騰の一因と言えるだろう。
日本は補助金によるガソリン価格安定策を実施
ところで日本政府は、石油元売り業者に補助金を出すことで、ガソリン、軽油、灯油、重油の石油関連4油種の小売価格高騰を抑える施策を、2021年度補正予算に盛り込んだ。規模は800億円である。補助金は12月中に始め、2022年3月末までの時限措置とする。 この制度は、ガソリンの全国平均小売価格が基準価格の170円を超えた時点で、元売り業者に補助金を出し、4油種ともに卸価格を上げないよう元売りに要請する。補助金はガソリン価格で5円分を上限とし、ガソリンの小売価格が175円を超えないようにする。ガソリン価格が175円を超えて上昇する場合には、基準価格を4週間おきに1円ずつ引き上げていく設計だ。 ガソリン価格の高騰対策としては、揮発油税制の見直しも選択肢としてある。ガソリンには現在1リットル当たり53.8円の税金が課されているが、このうち25.1円は財源不足のために上乗せされたものであり、1リットルあたりのガソリン価格が3か月連続で160円を超えた場合には、この25.1円分の上乗せ課税を止める仕組みがあり、それはトリガー(引き金)条項と呼ばれている。 ところが「トリガー条項」は東日本大震災の復興財源を確保するため運用が凍結されている。これを見直すには法改正が必要となり、時間がかかってしまうのである。そこで政府は、異例の補助金政策を採用したのである。