12球団ペナントレース総括 楽天
序盤戦は投打がかみ合いスタートダッシュに成功。8月に入るまではロッテ、ソフトバンクと首位争いを演じた。しかし、中盤以降は失速し、終わってみれば借金2の4位。2年ぶりにBクラス転落という悔しい結果となった。 投手陣ではロッテから金銭トレードで移籍の涌井秀章が中心となり、11勝をマークして自身4度目となる最多勝のタイトルを手にした。また、岸孝之は腰痛などコンディション不良により出遅れ、前半戦は本来のピッチングとはほど遠い出来。それでも二軍再調整を経て戻ってきた9月以降は6連勝をマーク。特に今季最終登板は完投勝利と尻上がりでシーズンを終えた。7連勝と初めて負けなしでのフィニッシュとなった。前半戦を涌井、後半戦を岸と、2人の右腕がチームを支えた。 その一方で生え抜き右腕でエースの則本昂大は苦しんだ。開幕3連勝まではよかったが、そこから3連敗と波に乗り切れない。自慢の速球もキレが鈍り、痛打される場面も多かった。終わってみれば5勝7敗と負け越し。シーズン防御率3.96は自己ワーストと振るわなかった。 加えて救援陣も苦しむ。松井裕樹の先発再転向により9回のマウンドを任されたのが森原康平だったが、背信投球を繰り返してその座を追われた。助っ人右腕のシャギワ、宋家豪も打ち込まれる場面が多く見られ、逆転負けは12球団ワーストの32度。救援陣の不調が下位転落に直結した。 打線では主砲の浅村栄斗が群を抜く勝負強さを見せ、序盤の快進撃を支えた。主に二番を任された鈴木大地が出塁して、浅村がかえすというパターンを確立。チーム打率.258、557得点、1029安打はいずれもリーグトップで、出塁率.341は12球団一の数字を誇った。ドラフト1位ルーキーの小深田大翔もシーズン途中から遊撃の定位置を確保。球団新人のマルチ安打34度は、2007年の渡辺直人の32度を抜く球団新記録となった。上位打線の多彩なタレントが得点源となった。 ただし、指揮官が掲げた「機動力野球」と「1点を守り勝つ野球」は実現しなかった。打線は打ち出したら止まらない勢いを見せる一方で、接戦での終盤には勝負を決める一打に欠けた。チーム盗塁数「67」はリーグ最少。走塁面では個々の意識が高まったとはいえ、チームの盗塁王は17盗塁の小深田と寂しい結果に。俊足を武器とする田中和基や辰己涼介の奮起が必要だ。「自分の目指していた野球がなかなかできなかったことを心残りに思う」とは三木監督の敗者の弁。Aクラス入り、優勝争いへ向かうためには課題が山積しているのが現状だ。 21年、石井一久GM兼監督は、下位に低迷したチームをどんな手法で生まれ変わらせるのか。その采配に注目が集まる。