「戦後史の闇に光を当てたい」 “三鷹事件”の第三次再審請求が申し立てられる
「自白」の内容や「パンタグラフ」の矛盾が争点に
判決が出された当時には、竹内氏による自白も証拠とされた。 しかし、取り調べの竹内氏の供述の内容は7回にわたり変遷していた。当初は全面否認していたものが、単独犯行を自白し、その後に共同犯行を自白。以降も審理のたびに供述の内容が変わっていった。 心理学者による鑑定意見書では供述の不自然さを指摘し、不当な取り調べが原因の「虚偽自白」であったと記されている。 また、電車の各車両の屋根に付いている「パンタグラフ」に関しても、物理的な証拠と竹内氏の自白の内容には矛盾があるという。 具体的には、竹内氏の自白では「第1車両のパンタグラフだけを上げた」とされていた。しかし、事故後に撮影された写真では第2車両のパンタグラフも上がっている。 検察側は「暴走時に何らかの物体が衝突するなどしてパンダグラフが上がった」と主張していた。一方で、弁護団が依頼した技術士が写真を通して検討したところ、「衝突によってパンダグラフが上昇した可能性は極めて小さい」との結論が出た。 今回の請求ではパンタグラフの問題について新たな検討が加えられている。車両の部品である「クラッチ」が外れてパンタグラフが上昇した可能性は否定できるとの結論が、証拠として追加で提出される。 弁護団主任の野嶋真人弁護士は、パンタグラフに関する証拠の意義について、以下のように説明した。 当時裁判所は、多数の人が犠牲になる大惨事を引き起こすほどの動機が竹内氏には存在しないことを認めていた。そのため、「竹内氏は車両の脱線を一定程度に収めるつもりだったが、予想以上に脱線してしまったために、本人も想定していなかった事故が引き起こされた」との判断を示したという。 しかし、犯人が第2車両のパンタグラフも上げたとしたら、車両を商店街などに衝突させて惨事を引き起こすこと自体が目的であったことが明白になる。すると、そもそも動機のない竹内氏が犯人であるという判断は、証拠と矛盾する。