半袖、半ズボン姿の「謎の少年像」正体に迫る有力証言 福井県内に40カ所設置か 時期や理由は
福井県内の26カ所に“謎の少年像”が点在しているという記事を福井新聞で掲載したところ、調査報道「ふくい特報班」(通称・ふく特)に多くの情報が寄せられた。主要道路沿いに休憩スペースを整備する県の1980年代後半の事業で、数年かけて約40カ所に像を建てたという県職員OBの有力証言が得られた。おおい町と南越前町で新たに2体の像も見つかった。 【写真】新たに発見された像の一部 ◆空間に彩り? 少年像はいずれも高さ約50センチで約1メートルの台座に立つ。半袖半ズボンのオーバーオール姿で、台座には「ひとやすみ」「水辺のいこい」といった文字が刻まれている。 県道路維持課(当時)の安全施設係長だった80代の男性や、総務係長だった70代の男性らOBの話を総合すると、少年像は県の「沿道スペース美化事業」で三十数年前に設置したとみられる。交通事故の急増が社会問題化していた当時、県管理の主要道路にポケットパークを設け、ドライバーの休憩を促す狙いがあったようだ。 元安全施設係長によると、スペースが殺風景にならないよう少年像を設けることになり、「発注先の業者に3種類の像を用意してもらい、40カ所ほど整備した記憶がある」という。両手を腰に当て口を開けた像と、手をかざし遠くを眺める像の2種類が確認されているが、さらにもう1種類あった可能性がある。台座の文言は課内で約10パターン用意し、各土木事務所が選んだらしい。 ◆新たな言葉 観光資源に活用できないかと考えた若狭おばま観光協会(小浜市)はホームページで、確認済みの少年像26体をマップ付きで紹介している。「ふく特」に寄せられた情報のうちマップ未掲載の一つは、おおい町大島に向かって青戸大橋を渡った先の旧県道沿い。手をかざし小浜湾を眺めており、台座にはこれまで複数の像にあった「紺碧(こんぺき)」の文字が刻まれている。 もう一つは南越前町関ケ鼻の国道365号沿い。像は足首から上がなくなっていて、靴だけが残っている。台座の文字は「草花とのかたらい」。他にはない言葉だ。 複数の県OBは、トンネルや道路拡幅工事の際に撤去されたり、廃止された道路沿いに残っていたりする像もあるかもしれない―と推測する。その見立てを裏付けるように小浜市田烏と泊の少年像は、工事などに伴い移設されたとの情報も「ふく特」に寄せられている。 車が通らなくなった道路脇で、人知れず立ったままの少年像がまだあるのかもしれない。 ■長野県にも少年像が…まだ残る謎 「ふく特」に届いた情報やメッセージからは、少年像が親しまれていることがうかがえた。「嶺南の“ひとやすみ坊や”を全て巡ると、スタンプラリー感覚で楽しかった。嶺北(の像)もクリアしたい」「少年と同じ目線で立つと、夕日がきれいに見える」などと、少年像を楽しんでいる内容が目立った。 同じような少年像が長野県内にあるという投稿も複数あった。調べてみると、松本市の像1体は1991年、労働省(現・厚生労働省)から労働時間短縮を目指す「ゆとり創造宣言都市」の指定を受けたのを記念し、同県労働基準協会連合会が設置したものだと分かった。ほかにも阿智村の昼神温泉や、軽井沢町での目撃情報もある。 福井県内の28体は県の単独事業で設置されたため、長野県の少年像とは目的も設置主体も異なるとみられる。では、なぜ同じような像が他県にもあるのか、だれがデザインし造った像なのか。謎はまだ残っている。
福井新聞社