“沖縄の原風景”が残された渡名喜島で 朝と夕に見られる美しい光景とは?
#211 Tonaki Jima渡名喜島(沖縄県)
渡名喜島は、沖縄に2カ所しかない重要伝統的建造物群保存地区。 もうひとつは竹富島ですが、そちらに比べて観光客の数がぐんと少なく、そのおかげか、“沖縄の原風景”をよりリアルに感じられる島です。 【画像】「あまり知られていないけれどスゴい!」「ここはハズせない!」ビーチの達人が選ぶ! もう一度行きたい絶景ビーチBEST10 渡名喜島は沖縄本島の那覇から北西に約58キロ。西に久米島、北に粟国島、南東に慶良間島の島々を結ぶと、だいたい真ん中に位置します。 那覇の泊港-渡名喜島―久米島行きのフェリーを利用して約2時間。島に近付くにつれ、ギザギザとした山並みが見えてきます。 フェリーが離発着するのは、島で唯一の集落。350人弱が暮らす、日本で2番目に小さな自治体です。
先人たちの知恵が詰まった渡名喜島の集落の特徴
集落内は推定の樹齢が200年を超すとされる、みごとなフクギ並木が続いています。 フクギは砂地でもしっかりと根を張るため、台風の通り道である沖縄では屋敷林としてよく見かける樹木です。 海に囲まれている島では、塩害からも守ってくれます。 肉厚の葉がびっしりと生え、夏は強い日差しを遮り、蒸散作用によって住居内の気温を下げる効果も。 冬は吹きすさぶ北風を防いでくれます。おまけに幹は建材に、木の皮は染料に、葉は燃料にもなる、重宝な存在です。 渡名喜島では赤瓦をのせた住居が道路面よりも、やや低い位置に建てられているのが特徴。これは、台風の暴風の影響を防ぐため、家をできるだけ低くしているのです。 サンゴなどを積んだ門の間、少し引いた場所には「ソーンジャキ」(返風)という塀が立てられています。 県内では「ヒンプン」とも呼ばれるこの塀は、住居内が外から見えないようにするため。魔除けの役割もあります。 碁盤の目のように走る幅2メートルほどの小道も、意識してみると、まっすぐではありません。これは台風の暴風対策として、風通しをあえて悪くするため。 そして、良い運気が通り過ぎないように、という風水的な意味もあるそうです。先人たちの知恵が詰まった伝統的建造物群なのです。 渡名喜島に最初の赤瓦葺の貫木屋(ヌチジャー)が、誕生したのは1892年のこと。 王府時代は身分によって住宅スタイルに制限があり、それが解除されたのが1889年。 カツオ漁で潤っていた渡名喜島は、離島ながらも、取り入れる時期が早かったようです。 その後も渡名喜島では貫木屋赤瓦葺が増え、1920年頃までには村内の9割を占め、現在のような集落の景観が整いました。 そんな渡名喜島の集落では、朝と夕に美しい光景を見かけます。 朝の気持ちのいい光景は「朝起き会」。早起きをした子供たちがラジオ体操の後、くま手を手に白砂の道を掃き清めるのです。 子供だって島の一員としてのお役目をこなす、100年以上続く、他の島にはない素晴らしい習慣です。 そして夕方から夜にかけては白砂の道を、等間隔に置かれたフットライトが照らします。このライトの光がなんとも幻想的なのです。