熊本地震は「マチ」「ムラ」型複合震災、爪痕色濃く残る農山村部
地震の影響で、教室棟の8教室、管理棟、特別教室棟の1階部分、すべての渡り廊下、体育館が、今も使えない。教職員らは、授業に穴を開けないよう、さまざまな工夫をしている。 教室棟は昨年8月、管理棟は昨年11月からプレハブで代用。調理実習は、校内のセミナーハウス厨房で実施する。バスケットやバレーボールを含め、体育の授業は屋外に出るなどしている。今月の始業式は、すべての教室に生中継した。那須高久校長は「教育活動への地震の影響を最小限にとどめることが、われわれの役目だ」と力強く語る。
●課題が顕在化しにくい農山村部
農山村部はどうか。熊本市から東へ約20キロに位置する熊本県西原村。人口およそ6800人の小さな村だが、熊本市内からのアクセスがよく、阿蘇外輪山の雄大な自然を感じられることから、週末は多くの観光客でにぎわっていた地域だ。4月16日未明の本震時には最大震度7の揺れを観測。大切畑(おおきりはた)地区では、擁壁が崩れるなどし、二十数世帯のほとんどが全壊した。家屋の解体をすでに終えており、現在は更地が広がる。 農山村部の復興に携わる熊本大名誉教授(農村社会学)の徳野貞雄氏は、今回の熊本地震が「マチ型震災」と「ムラ型震災」の複合型震災であると指摘する。西原村も含まれる「ムラ型震災」は、報道量が極めて少なく、課題が顕在化しにくいという。 同村で活動する復興支援団体「Noroshi(のろし)西原」によると、同地区住民の大半は、現在も応急仮設住宅などで生活。地区に戻るのか、別の地域に移るのか、ほとんどの住民が決めかねている。こうした悩みから、仮設住宅で元気のない住民も多いという。また、ため池にも被害があり、農業への影響も深刻だ。
「ワクワク感」が生む復興
今後どのように復興を進めていけばよいのか。徳野名誉教授は「ワクワク感」をポイントに挙げる。住民らに「ワクワク感」を感じてもらうことで、気持ちは元どおりになるばかりか、よりポジティブになれる。これこそが「創造的復興」であると、徳野氏は訴える。