熊本地震は「マチ」「ムラ」型複合震災、爪痕色濃く残る農山村部
昨年4月14日夜、熊本県を震度7の揺れが襲った。そのわずか2日後、再び震度7の「本震」が来た。震度1以上の余震は4300回弱を数え、M3.5以上でも339回もの余震が相次いだこともクローズアップされた。一連の熊本地震からきょうで1年。熊本市中心部の復興は進んでいるが、少し離れれば、まだ地震の爪痕が色濃く残る。各地の現状を探った。(ライター/田中森士) 【写真】「被災してES書けない」熊本地震で焦り募る地元就活生たち(2016年5月掲載)
●にぎわい戻る中心市街地
4月上旬の平日。午後7時ごろの熊本市中心市街地。アーケードを歩くと、解体を待つ商業ビルが点在するものの、街は地震前の姿に戻りつつあることが分かる。それにしても人通りが多い。 中心市街地の上通商栄会の河島一夫会長によると、郊外のショッピングセンター(SC)が被災し一時休業した影響もあり、地震前と比較して、通行量が増えたという。SCが営業再開した今も、通行量は変わっていない。河島会長は「週末にイベントを開催するなどして、さらなるにぎわいを創出したい」としている。 中心市街地でバーを経営する男性(32)は、「うちの店舗では昨年11月ごろから客足が戻りはじめ、今年に入ってからほぼ地震前の水準にまで回復した」と話す。昨年までは建築やインフラ関係など、県外から仕事で訪れている人が目立ったが、今では地元住民も増えているという。「地震が夜に発生したこともあり、地震からしばらくの間は、家路を急ぐ人が多かった。今はもう心理的にも回復してきたんじゃないかな」。 熊本市の不動産会社に勤務する男性(39)は、「中心市街地のテナント物件では、築年数が比較的新しい商業ビルを中心に軒並み契約済み。条件の良い物件を探すのは困難な状況」と明かす。どうやら街には活気が戻ったと言っていいようだ。
●震源地に近い高校
中心部を離れ、熊本市東区の県立第二高校を訪れた。震源地に近い高校で、建物被害が大きい。筆者の母校でもある。 同校によると、学校が再開したのは昨年5月10日。それまでは、避難所などでボランティア活動にあたった生徒も多かった。再開当初は全30教室のうち、使えたのはわずか10教室。登校日を学年ごとにローテーションするなどして、しのいだ。日本ユニセフ協会(東京)から贈られた多目的大型テントなどにより、再開から約2週間後の26日、ようやく30教室が確保できた。