シリアのアサド政権が崩壊 “後ろ盾”露プーチン政権へのダメージは
ロシアのプーチン大統領はシリア内戦に介入し、アサド政権の“後ろ盾”として中東などで影響力を拡大してきた。しかしロシアはウクライナ侵攻で余力を失い、反政府勢力の猛攻からアサド政権を守り切れなかった。プーチン氏の政治的ダメージも避けられない状況だ。 ▼トランプ次期大統領「ロシアがアサド大統領を守ることに興味を失った」
■シリア軍事介入…プーチン大統領にとっての意味合いは
プーチン大統領は2015年にシリア内戦への軍事介入に踏み切った。2011年に本格化した民主化運動「アラブの春」によって、シリアではアサド政権と、さまざまな反政府勢力が入り乱れる形で内戦が続いてきた。アサド政権は劣勢だったが、ロシア軍の空爆の支援を得て戦況を好転させることに成功した。 プーチン大統領は以降、アサド政権の後ろ盾として中東での影響力拡大を図ってきた。プーチン氏は2014年にウクライナのクリミアを併合したことで西側諸国から制裁を受けていて、シリアへの介入はアメリカなどに対抗し、世界にロシアの影響力を示す象徴的な意味合いもあったとされる。
■シリアは“露の戦略的要衝”…軍事施設も
ロシアにとって、地中海に面するシリアは戦略的な要衝でもある。2つの主要な軍事施設を通じ、中東やアフリカへ影響力を行使してきた。 タルトゥース海軍基地は、ロシア海軍にとって地中海での唯一の補給・修理拠点。気候が暖かく、一年中利用できる貴重な軍港だ。またフメイミム空軍基地は近年、アフリカでの活動を広げるロシアにとって中継拠点としての価値が高まっていた。
■アサド政権のあっけない崩壊…ロシアに余力なく
シリアの反政府勢力が先月下旬以降、大規模な攻勢を仕掛けたのに対し、ロシアによるアサド政権への軍事支援は非常に限定的なものだった。ウォール・ストリート・ジャーナルは7日、アサド政権の強力な味方だったロシア空軍について「ウクライナ侵攻で火力を消耗し、シリアでの活動は大幅に縮小した」と報じている。今回も空爆などの支援は行ったものの、戦況を変えるほどの効果はなかった。 同じくアサド政権を支えてきたイランやイスラム教シーア派組織ヒズボラも弱体化する中、ロシアにもウクライナとの二正面作戦に臨む余力がなかったのが実情だ。ブルームバーグ通信は6日、ロシア大統領府に近い関係者の話として、プーチン大統領はアサド政権軍が拠点を放棄し続ける限り、アサド氏を救うつもりはないようだとの声を伝えていた。