坂本真綾がふりかえる『レ・ミゼラブル』でぶつかった壁を乗り越えるまで「子育てとの両立はもう必死です」
さまざまな国と文化を盛り上げていけたら
――今作は中国制作のアニメです。坂本さんは他国のアニメ文化の発展をどう感じていますか? 坂本 日本のアニメは歴史が長くて海外からの評価が高い作品が多いです。今作は日本のアニメの影響を受けてきたクリエイターたちが、海外にもたくさんいるんだなという印象を受けました。オリジナルアニメだけど、どこか日本のテイストを感じる場面があってリスペクトを感じたんです。 さまざまな国の映像作品に関わる度に、どの国でもアニメの映像のクオリティが上がっているなと身をもって感じています。それは日本にとってもいい刺激になりますよね。互いに文化を盛り上げていけたらうれしいです。 ――エッセイでは海外作品に関わる時に感じた日本の文化との違いを書いていますが、今作で感じた違いはありましたか? 坂本 韓国ドラマでも同じことを思うのですが、よくお酒を飲みますよね。中国もお酒をたくさん飲む文化があると思うのですが、この作品でも乾杯する場面が本当に多いです。かといって遊び惚けているわけではなく、「テストがあるから、しばらく会えない」とちゃんと勉強と向き合う。真面目だなぁ。私の感覚では、日本の大学生は講義をサボって遊びにいくのが青春ドラマだった気がするんですけど。そういうところは受験競争が激しい国の大学生だからこそかなと感じました。
「子どもが生まれる前の人生を思い出せない」
――私生活では2022年に出産されて、大きな変化がありました。産後、仕事の価値観は変わりましたか? 坂本 本当に生活は大きく変わりましたね。子どもが生まれる前の自分はどういう人間だったのか、思い出せないくらいです。子どもがいなかった40年間、私は何をして生きてきたんだろう。そう思うくらい今は子育てしかしていません。変化が著しいから、仕事の価値観にも影響が出ているはずなんですけど、改めて意識する場面はあまりないんです。 ただ涙もろくなったなと感じますね。いろんな話ですぐ泣いちゃうんです。それに親子関係にも目が行くようになって、役柄として澪にフォーカスしているのに、「澪のお母さんは、今ごろ娘を心配しているのかな」と考えたりしちゃうんですよね。そこに共感すべきじゃないのに。陽の初恋の相手の桃井真珠(まこと)は親子関係が複雑なので、「それでも真珠が純粋に育って良かったな」としみじみ思ったりしていました。