北新地、夜の違法駐輪…終電早まるも「タクシー代出ない」
西日本有数の歓楽街・ 北新地 （大阪市北区）で、放置自転車対策が課題となっている。市の「自転車等放置禁止区域」に指定されているが、近隣に駐輪場が不足している上、コロナ禍で終電時間が繰り上がり、自転車を利用する従業員や客が増えているとみられる。（飯田拓） 【図表】北新地周辺の自転車放置禁止区域
1600台
8月下旬の金曜日の夕方。市の作業員が北新地の路上に止められた自転車を次々に撤去し、トラックの荷台へ積んでいった。市の担当者は「撤去しても同じ場所にまた駐輪され、いたちごっこです」と苦笑いした。 市が3月1日に実施した調査では、夕刻から放置自転車が増え、午後10時台にピークの約1600台に達した。乗っていた約460人を追跡調査した結果、4割弱が飲食店などの従業員とみられ、客も約2割に上った。 北新地から100メートル圏内の駐輪場は公営と民間を合わせて約800台分しかなく、市は平日の午後8～10時台には1000台分以上が不足すると試算する。放置自転車を避けようと車道にはみ出す歩行者もおり、緊急車両の通行などへの懸念も出ているという。
「仕方なく」
飲食店などでつくる北新地社交料飲協会の長瀧敏郎理事長（66）は「近年は接待客が減り、従業員の送迎用の車を用意できる高級店も減った。代わりにリーズナブルな店が増え、自転車を使う従業員や客が珍しくなくなった」と話す。 同協会によると、放置自転車は2008年のリーマン・ショックから目立ち始め、コロナ禍で増加したという。21年以降、JRや私鉄が相次いで終電を10～30分程度繰り上げたことも影響している。 勤務先のクラブから離れたオフィスビル脇の路上に駐輪した男性（27）は「仕事終わりにはすでに電車がなく、職場からタクシー代の支給もない。7キロ離れた自宅まで歩くのは厳しい」と説明。店に近い駐輪場はいつも埋まっているといい、「上司から『みっともないから店の前に止めるな』と言われ、仕方なく離れた路上に置いている」と打ち明けた。
