「海外の方にも将棋の魅力をより身近に」藤井聡太王座、来年王座戦開幕局は昨年のベトナムに続き東南アジア開催
将棋の第72期王座就位式が9日、東京・千代田区のパレスホテル東京で行われ、藤井聡太王座(22)=竜王、名人、王位、棋王、王将、棋聖=に野原未蘭女流初段(21)から花束が贈呈された。同式では、2025年の王座戦の開幕局がシンガポールで行われると発表された。藤井が海外で対局を行うのは、23年6月の棋聖戦五番勝負でのベトナム・ダナン対局以来2度目となる。 再び、藤井が海を渡る。藤井はシンガポール対局について「来期の第1局はシンガポールで開催していただくということで、私自身も非常に楽しみにしています。海外の方にも将棋の魅力をより身近に感じていただけたらと期待をしています」と早くも待ち遠しそうに語った。 王座戦の海外対局は02年の中国・上海対局以来23年ぶり。日本将棋連盟の羽生善治会長(54)は「大きなタイトル戦がシンガポールというアジアの大きな街で開かれるのをうれしく思いますし、現地の皆様にも喜んでいただけるのではないか」と将棋の海外普及への貢献に期待した。 この日、式では7キロあるトロフィーを贈呈された藤井。今年9月、永瀬拓矢九段を相手に3連勝で王座初防衛を果たした五番勝負については「今期は考えても形勢判断がつかないような局面も少なからずありました。ただ、そういった局面こそが将棋の奥深さであったり、新たな可能性というものを開くものでもあるのかなと感じています」と振り返った。 11月の取材では「英語は上達していません(笑)」と明かしていた藤井。シンガポールの勝利の女神を振り向かせられるか。(瀬戸 花音) ◆“乗り鉄”MRT利用か シンガポールでの開幕局は、例年通りであれば8月下旬から9月上旬に開催される予定。伝説の動物マーライオンの像がある「マーライオンパーク」や世界遺産に登録されている植物園「ボタニック・ガーデン」などへの観光が予想される。藤井が“乗り鉄”であるため、現地の電車・MRTやモノレール・LRTなど鉄道を利用する可能性もある。また、対局中のおやつや昼食も注目だ。同国には「ハイナンチキンライス」やココナッツ風味の麺料理「ラクサ」などの名物料理がある。 ◆洋室に畳 おやつ&昼食ベトナム料理 昨年6月5日、ダナンで行われた対局では藤井が佐々木大地七段との熱戦を制した。藤井にとってはプライベートも含め初の海外渡航だったため、この対局のためにパスポートを取得。対局場となったホテル「ダナン三日月」では「なるべく環境が変わらないように」と洋室に特別に畳を敷き、日本から持って来た盆栽も置かれるなど、配慮された。 対局中の食事には和食とベトナム料理の両方が用意されていたが、藤井は午前、午後のおやつと昼食、全てベトナム料理をチョイス。ベトナム風のぜんざい「チェー」、チキンライスの「コムガー」、ベトナムの伝統的な餅菓子「バンヤロン」を楽しんだ。 両対局者は対局翌日、孫悟空が閉じ込められていたとの伝説があるダナンの五行山や、巨大レディーブッダ像で有名なリンウン寺、ホイアン旧市街などを観光した。
報知新聞社