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生き別れの三つ子を巡る、世にも奇妙な物語:衝撃の米ドキュメンタリー映画『同じ遺伝子の3人の他人』

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nippon.com

渡邊 玲子

生後6カ月で別々の家庭に養子に出され、19歳で奇跡の対面を果たした一卵性三つ子の半生に迫り、サンダンス映画祭でも審査員特別賞を受賞して話題を集めたドキュメンタリー映画『同じ遺伝子の3人の他人』が、現在Amazon プライム・ビデオで配信中。本人のみならず、それぞれの養父母ですら、彼らが三つ子である事実を知らされていなかったのはなぜか。1980年代当時の新聞記事やアーカイブ映像に再現VTRを織り交ぜ、当事者である三つ子やそれぞれの養父母、関係者らの証言をもとに、長年隠蔽され続けた真実に迫っていく。

1980年、ニューヨーク。大学に入学したボビーは、見知らぬ人たちから口々に「エディ!」と呼び止められる。「君に瓜二つの男がいる」と聞いて驚いたボビーはエディに会いに行くと、一目で自分たちが双子であることを確信する。やはり生年月日が同じで、互いに同じ施設からユダヤ系の夫婦の元に養子に出されていた。そんな奇跡の再会が新聞で報じられた直後、なんと今度は「3人目」が名乗り出る。同じ日に生まれて養子に出されたデイヴィッドだ。見た目はもちろん、相槌を打つタイミングや細かな仕草までそっくりな3人はたちまちメディアの人気者になるが、皮肉にも彼らの幸福な時間は長くは続かない。そしてある日、思いもよらない悲劇が襲い掛かる…。 生き別れの三つ子が奇跡的に再会して、離れていた年月を埋めるかのように一気に絆を深める、という話だけでも十分興味を引かれるが、このドキュメンタリーにおいて、それはあくまでも序章に過ぎない。同じ遺伝子を持った3人が、社会的地位や経済状況の異なる家庭に引き取られてしつけや教育を受けると、どんな人格の人物に成長し、どんな人生を送るのか。本人ばかりか養父母たちすら一切内情を知らされないままに、長年にわたり定期的に観察され、研究対象として記録されていたという事実に、ただただ驚愕させられる。 しかもいまだに詳細は掴めておらず、その研究の実態はほぼ謎に包まれている。つまり彼らの他にも、双子や三つ子として生まれたことを知らないまま暮らしている人たちがいる可能性も高いのだ。いったい誰が、何のためにそのような非人道的な人体実験を行ったのか――。取材に応じた当時の関係者たちが何ら悪びれる様子もなく、「今から考えると問題なのかもしれないが、当時は特別疑問に思わなかった」と、口を揃えるのも不気味でならない。 カメラの前で嬉々とした表情で互いの共通点を語り、シンクロぶりを披露していた彼らが、その後どんな半生をたどったのかについては、ぜひとも実際に作品を観て確かめてほしい。双子や三つ子を前にすると、似ている点ばかりに注目してしまいがちだが、当然ながら、彼らはそれぞれ異なる個性や価値観を持った別人だ。たとえ同じ環境でずっと一緒に過ごして育ったとしても、決して同じ性格の大人に成長し、同じ人生を歩んでいくことにはならない。同じ遺伝子を持ちながら異なる環境で育った3人それぞれの大人になった姿を見ると、幼少期に接する人物との信頼関係が、いかに人格形成に多大な影響を及ぼすのか、そして大人は子どもの個性にどう向き合うべきなのか、深く考えさせられるに違いない。

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