「クセが強い」の汚名返上 バタークリームの躍進を支えた「コレステロール論争」とは?
丸の内・銀座・目黒の名店にも脚光
もう7、8年になるでしょうか。バタークリームのケーキがじわじわと愛好者を集め、最近では「ブーム」と呼ばれるようになりました。 【今や定番】バタークリームを使った最旬スイーツ(画像5枚) もともとバタークリームは、洋菓子作りには欠かせない構成要素。ダコワーズやマカロン、オペラのように、パーツとして使っている有名菓子、伝統菓子は数多くありましたが、現在はことさらバタークリームが主役であることを強調したり、原料バターの品質の高さをアピールしたりする商品が増えています。 フランスの高級ブランドバターである「エシレバター」の専門店、丸の内ブリックスクエア(千代田区丸の内)1階にある「エシレ・メゾン デュ ブール」には、バタークリームをたっぷり使った生ケーキ目当ての人々が開店前から列をなし、連日完売です。 乳酸菌で発酵させた生クリームから作られるエシレバターは、軽い酸味と独特の香りを含みます。 以前、この種の発酵バターは「クセがある」と敬遠する人が多く、せいぜい焼き菓子の隠し味に利用される程度で、生菓子で個性を前面に出すことはめったにありませんでした。日本人のバターに対する嗜好は、より濃厚に変わりつつあるようです。 ブームのおかげで、銀座「洋菓子舗ウエスト」(中央区銀座)や学芸大学「マッターホーン」(目黒区鷹番)など、老舗洋菓子店の歴史ある定番が脚光を浴びているのは、うれしい事態です。
かつてバタークリームが敬遠された理由
ウエストの、その名もズバリ「バタークリームケーキ」は、有塩バターからくるほのかな塩気がアクセント。塩の効果でバターの風味を引き出し、かつあっさりさせるという、日本ならではの味わいです。 実は、バタークリームには、「重くて、くどくて、おいしくない」と、悪いイメージを持たれた時期が続きました。とくに軽くふんわりした生クリームやムースのケーキが主流になってからは、「古臭い」とみなされるようになってしまいました。 これには、わかりやすい理由があります。 昔は、バターの品質があまりよくなかったことがひとつ。ふたつめは、価格をおさえるために植物性のショートニングやマーガリンを混ぜて作っていたことです。 食品表示がうるさくなかった時代は、植物性でも堂々とバタークリームとうたうことができました。 ワクワクしながら口に入れたバースデーケーキやクリスマスケーキのクリームにバターらしいコクをまったく感じず、それどころか舌にまとわりつくようなしつこさが残ったら、がっかりの気分も倍増するというものです。 理由の三つめは、家庭での保存が悪かったことです。 かりに本物のバターを使っていたとしても、バタークリームは酸化が早く、外からの匂いを吸着しやすいのが特徴。それなのに、何日も冷蔵庫に入れていたり、逆に室温で長く置いておいたりと、劣化した状態で食べることが多かったのです。