都医師会・尾崎会長「この3週間がラストチャンス」政府にも「ぜひ真剣に考えて」【冒頭全文】
公益社団法人東京都医師会は22日に緊急記者会見を行い、尾崎治夫会長は年末年始を「真剣勝負の3週間」と位置づけて感染防止を訴え、政府にも「どうしたら今の感染を抑えることができるか真剣に考えて」と注文をつけた。以下、尾崎会長の冒頭の発言を全文掲載する。 【写真】会見が行われた東京都医師会館(千代田区神田駿河台) ◆ ◆ ◆ 尾崎治夫(以下、尾崎)「『緊急記者会見』ということで記者会見をさせていただきます。なぜ『緊急』かといえば、(政府が呼びかけた)勝負の3週間が過ぎましたが、今日も563名の新規感染者が出ております。先週の火曜(15日、460人)と比べると100人増えております。先週の木曜以降も、前の週に比べるとずっとこのように毎日100人近く増えているということで、感染者の増加が止まる気配はありません。年末年始にかけて、医療体制もある意味で手薄になるこの3週間が、私どもにとっても皆様方にとっても大切な3週間ではないかと思いまして、ぜひ私どもの思いを訴えたいということで開かせていただきました」 尾崎会長はまず、若い世代に感染予防の徹底を呼びかけた。 尾崎「勝負の3週間は過ぎましたけれども、真剣に勝負したい、その3週間にしたいということで『真剣勝負の3週間』と言わせていただきます。社会は皆つながっているんです。若い方も、高齢者もつながっているんです。そこをもう一度考えていただきたいと思っています。昨日も(政府)分科会の尾身(茂)さんが言っていましたけれども、行動の活発な20~50代の方が飲食を通じて感染を起こし、それが家庭内、(高齢者)施設内に広がっていく。これは事実だろうと思っています。 『高齢者だって動き回っているじゃないか』というような批判も受けますけれども、現実的にどの年代の方が感染しているかということを見れば、やはり20~50代の方が多いのでありまして、ここの流れを何とか食い止めたいんです。若い方にもそれぞれお父さん、お母さんがいます。お祖父さん、お祖母さんもいると思います。その人たちがもし感染者になれば、やはり命にかかわることも出てまいります。若い方の後遺症の心配も僕はしていますけども、命は失わないとしても、つながりのある人がそういう状態になるということを、ぜひ考えていただきたいと思っています。 Facebookの記事ですが、この間、アメリカで診療しているドクターが実例を挙げていました。息子さんがコロナにかかった。家庭内に持ち込んでお母さんもコロナにかかってしまった。息子さんは若い世代なので幸いなことに軽症で済んだけれども、お母さんは重症化して亡くなられた。こういうケースが今後、特に東京ではどんどん出てくる可能性があるので、ぜひそういう意味でも20~50代の方に注意をしていただきたいと思っております」 さらに、都はすでに「市中感染」の状況であると明言。 尾崎「今、広島や岡山などにいろいろ感染者が出てきていますが、基本的には夜の街や高齢者施設のクラスターが多いと思います。まだまだクラスターを追えば何とか抑えられる。ところが東京を見てください。区中央部の港区などはもちろんですが、東のほうの足立区や北のほうの練馬区、板橋区、西のほうの新宿区、世田谷区、南のほうの大田区、まんべんなく23区で感染が広がっております。最近では、たとえば多摩府中保健所管内は、週の(新規感染者)報告数を見ますと東京都のベスト5に入ってきております。つまり23区、そして多摩地区にもどんどん広がって、どこでPCR検査をして陽性が出ても全然驚くことはないくらいに広がってきております。クラスターはほとんど追えません。家庭内、施設内、要はもう市中に入り込んでいます。 Go To一時中止によって、大きな人の流れは止めていただきました。しかしながら、都内での小さな人の流れはまだまだ止まっていません。特に飲食関連でうつっているということは昨日も尾身さんも強調しておりました。ぜひここを止めなければいけない。これからの3週間、少人数、あるいは静かな会食を除いてお仕事が終わったら真っ直ぐ家に帰っていただきたい。特に大人数の宴会は控えていただきたいと切に願っております。本当にこの3週間がラストチャンスだと、私は思っています。 年末年始(医療機関は)手薄になります。ここで今のような増え方をすると、年末には1000人、さらにどんどん増えていくということになりかねません。冬場ですので脳卒中、心筋梗塞、大動脈疾患、肺の疾患、そういったものもどんどん増えてきて救急患者が増えてくる。そういう時期に、果たして救急患者が今までのように診られる状態にあるのか、ということを大変危惧しております。救急患者さんは適切な治療を受ければかなりの方が助かります。特に大動脈疾患などは、手術をしないと6割以上の方が命を失うという危険な病気であります。これも、今ほとんど受け入れられない体制に近づいていると聞いております。今こそ感染者を少なくしないと、通常診療が本当に駄目になる瀬戸際です。ぜひお願いしたいと思います。感染者を減らしましょう、皆さんの手で減らしましょう」 政府にも「真剣勝負」を突きつけた尾崎会長。 尾崎「皆さんもご存知だと思いますが昨日、9医療団体で『医療緊急事態宣言』を発表いたしました。(日本医師会の)中川(俊男)会長の音頭でこういったものができたということは、私どもも大変良かったと思っていますが、ただ宣言を出しただけでは駄目でございます。この危機感を国民、都民が共有していただいて、ぜひ政府、政治を担っている方々にもどうしたら有効に今の感染を抑えることができるか。『緊急事態宣言』を出してくれと言っているのではありません。どうしたら有効で実践的、効果のある対策、政策が取れるかということをぜひ真剣に考えていただいて、そして声明を出していただきたいと思います。国民、都民に訴えかけていただきたいと思います。そういったものがあれば、私どもも一生懸命頑張るつもりでいます」 最後に尾崎会長は改めて「都民の皆さんには感染を減らす努力をしてください。国にもそういった有効な政策を出してくださるようお願いします。私どもは一生懸命、東京の医療が崩壊しないように頑張ってまいります。よろしくお願いいたします」と挨拶して締めくくった。 ※尾崎治夫の「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記。