平家滅亡と「菅田義経」あっという間の転落。騒動の震源地「大天狗・後白河院」へのモヤモヤが止まらない【鎌倉殿の13人 満喫リポート】
ライターI(以下I):第18回では壇ノ浦合戦が描かれ、平家が滅亡しました。 編集者A(以下A):一ノ谷以降、屋島→壇ノ浦と続く源平合戦ですが、今回は前半に義時(演・小栗旬)の〈米を積んだ船が、屋島の沖で平家に奪われてしまうのです〉という台詞が耳をとらえました。この段階では、瀬戸内海の制海権をまだ平家が握っていたということを教えてくれます。 I:さっそく地図を広げてみました。このとき平家が本拠としていたのは屋島(香川県)。ここから瀬戸内海を西に向かうと戦国時代に塩飽水軍の本拠になる塩飽諸島があり、お笑いコンビ「千鳥」大悟さんの出身地である北木島などがあります。さらに西に進むと現在「しまなみ海道」といわれる村上水軍の本拠地となった島々に行きつきます。「しまなみ海道」は、直木賞作家安部龍太郎さんが『サライ』の連載「半島をゆく」(現在は終了)で取材していましたね。 A:はい。島々が連なる「しまなみ海道」の付近は潮流の変化もあり航行するのが大変で、そのため後に「村上水軍」が登場したということでした。劇中の時代は、平家の勢力圏。そのため、源氏軍が懸命に調略を仕掛けたのでしょう。頼朝挙兵時の伊豆では平家の代官らが強権をふるっていた様子が描かれていましたが、「平家代官の強権」は、全国的な傾向だったと思いますから、瀬戸内の島々でも平家の代官らが偉そうにしていたのでしょう。
『鎌倉殿の13人』のここがすごい
I:劇中では、〈平六が豊後の水軍を味方につけてくれました〉という話がでてきて、三浦義村(演・山本耕史)が活躍したという設定でした。範頼軍が九州に上陸して筑前を攻め落とした流れになりました。平家の退路を絶ったということで、ものすごく重要なエピソード。このエピソードをしっかり挿入してくるとは、さすがだなと感じました。 A:瀬戸内海の制海権をめぐる攻防があったんだなと想起できました。しかも、その交渉に当たったと設定されたのが三浦義村というのがしびれますね。三浦半島を本拠にして、現在の東京湾を縦横無尽に奔っていた三浦一族だからこそ、同じ海に生きる西国の「海人」たちを説得できた、という設定なのかと思って、感動してしまいました。 I:深みがすごいです。加えて、逆櫓をめぐる梶原景時(演・中村獅童)とのやりとりもしっかり挿入されていました。景時と義経(演・菅田将暉)のやり取りが狐と狸の化かし合いを見ているようで、不思議で斬新な感覚でした。 A:逆櫓のエピソードも景時・義経のやり取りがスリリングで既視感がない流れになっていました。さまざまな要素がバランスよく配置されていて、ちょっと気を抜けないところがこのドラマの最大の魅力であり、落とし穴なのかもしれません。 I:気が抜けないっていうのは、まさにそうですよね。今回も合間に、木曽義高(演・市川染五郎)が討たれて、傷心の大姫(演・落井実結子)のその後もしっかり挿入されていました。 A:現代でいえば、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のような状態になってしまったのではないかと推察します。『草燃える』では、「斎藤こずえ→池上季実子」という演者でした。本作では成長した大姫は南沙良さんが演じますね。時代劇では映画版の『居眠り磐音』にも出演した若手有望株です。