政府の物価高対策の影響を強く受ける今後の物価動向(8月東京都区部CPI)
東京都区部8月コアCPI(除く生鮮食品)は昨年9月以来となる+2%台
総務省が25日に発表した8月分東京都区部消費者物価統計で、コアCPI(除く生鮮食品)は前年同月比+2.8%と7月の同+3.0%から低下した。事前予想の同+2.9%を下回った。上昇率が+3%を下回るのは昨年9月以来、11か月ぶりのことだ。 8月は電気代、都市ガス代の値下げが、コアCPIの前年比上昇率を0.29%ポイント押し下げた。他方、生鮮食品を除く食料の前年同月比は+8.9%と7月の同+9.0%を下回った。食料品価格の値上げの動きはなお続いているものの、その勢いは次第に鈍ってきている。 ただしより基調的な物価動向を示す食料(酒類を除く)及びエネルギーを除くCPIは、前年同月比で+2.6%と前月の同+2.5%から上昇しており、なおピークアウトは確認できていない。 前年同月比を個別品目で見ると、いかの+60.5%、プリンの+38.6%、鶏卵の+31.9%、あんパンの+16.7%など、一部食料品の価格の上昇が引き続き目立つ。他方、キャットフードの+41.3%、旅行の回復を反映した宿泊料の+18.1%などの上昇も続いている。
この先の物価は政府の物価高対策に大きく左右される
この先の物価は、引き続き政府の物価高対策に大きく左右される情勢だ。政府は昨年1月に導入したガソリン補助金について、9月の廃止を睨んで6月から段階的な削減を開始しており、その結果ガソリン価格は上昇を続けている。 原油価格(WTI)が1バレル81ドル、ドル円レートが1ドル145円でこの先推移する場合、8月末に全国平均のガソリン小売価格は平均で196円程度まで上昇し、補助金が撤廃される9月末には199円程度となる計算だ。この場合、消費者物価は合計で0.34%押し上げられる。 また、この先、原油価格が85ドル/バレル程度まで上昇し、またドル円レートが150円まで円安が進む場合には、9月末のガソリン価格は212円程度にまで達し、消費者物価を0.48%押し上げる計算となる。 しかしながら政府は、ガソリン補助金を延長する方向で既に調整に入っている。補助金延長により、ガソリン価格を再び170円程度で維持する施策が講じられる場合、補助金撤廃の場合と比較して消費者物価は0.27%低下する計算だ。 他方、1月に導入した電気代、ガス代の補助金制度も延長される場合、予定通りに9月に終了する場合と比べ、消費者物価は0.99%低下する。 両者を合計すれば、消費者物価への影響は-1.26%とかなり大きくなる。ただし、補助金制度の延長には多くの問題点がある点は改めて指摘しておきたい(コラム「政府はガソリン補助金延長と経済対策の2段階実施へ:ガソリン補助金延長で物価は0.27%低下、実質個人消費は0.13%上昇」、2023年8月23日)。