人生の節目に寄り添う水引 結う、編む、組む…そして貼る くらしと工芸
関島さんのような伝統的な職人ばかりでなく、飯田市には、水引に現代的な美しさを見いだしたアーティストもいる。仲田慎吾さん(42)。郷里にUターンして水引と〝再会〟し、「とりどりの色彩と独特の質感、日本的な雰囲気を持ち、曲げたり加工したりできる使いやすい素材」と、その魅力にひかれた。
仲田さんにとって水引は作品を生み出す素材。結うのではなく、切って連ねて貼ることで、アート作品を制作し、自らの世界観を表現している。「水引同士が連なると、これまでに見たことのない独特の表現があらわれる。そこに面白さがあります」
実用から装飾まで幅広く用いられ、地場産業として地元の人々の暮らしを支えてきた水引。しかし時代の趨勢(すうせい)で、水引で贈答品を豪華に引き立てる習慣は廃れ、盛大な冠婚葬祭は減り、季節のしつらいを大切にする文化も縮んでしまった。関島さんは「いつの時代も水引は、人の思いをのせて結ばれるもの。あえて言葉でなく水引に思いを託すのは、日本人ならではの奥ゆかしい感性であり、絶やしてはならない文化なのです」と、その変容を残念がった。(田中万紀)