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課題多い高校の特別支援教育

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ベネッセ 教育情報サイト

2007(平成19)年度から特殊教育が特別支援教育に切り替わり、発達障害が特別支援の対象となるなど、学校現場における障害のある子どもたちへの対応は、確実に進んでいます。しかし学校段階別に見ると、小中学校の体制は整備されつつあるものの、高校での取り組みはまだまだ不十分と言わざるを得ないようです。 特別支援教育に対する高校での取り組みが遅れている最大の原因は、「高校は義務教育ではない」という意識から、学習や学校生活での不都合は自己責任での対応が当然、という考え方が根強くあるからです。しかし、学校教育法にも明記されているように、高校にも障害などがある子どもに対する特別な支援を行う義務があります。特別支援教育は、決して義務教育である小中学校だけのものではないのです。

では、高校の特別支援教育に対する取り組みは、どこまで進んでいるのでしょうか。文部科学省がまとめた2014(平成26)年度「特別支援教育体制整備状況調査」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1356207.htm)によると、公立学校のうち特別支援教育を推進するための「校内委員会」を設置しているのは、小学校100.0%、中学校100.0%、高校99.5%、発達障害など特別支援を必要としている子どもがいるかどうか「実態把握」を行ったのは小学校99.1%、中学校97.9%、高校90.3%、特別支援教育のための「コーディネーター」となる教員を指名しているのは小学校100.0%、中学校99.9%、高校100.0%などとなっています。特別支援教育が導入されてから時間がたったこともあり、ようやく高校も小中学校並みの特別支援教育の体制を整え終えたようです。 ところが、特別支援教育では子ども一人ひとりのニーズに対応した「個別の指導計画」と「個別の教育支援計画」を作成することになっていますが、「個別の指導計画」を作成している公立学校は小学校93.5%、中学校89.8%なのに対して、高校は33.0%でした。「個別の教育支援計画」の作成も小学校79.5%、中学校77.1%に対して、高校は28.1%となっています。さらに、特別支援教育に関する研修を受けた教員の割合も小学校88.9%、中学校78.8%に対して、高校は70.4%にとどまっています。特別支援教育に対する表面的な体制は整備したものの、いまだに実質的な取り組みをしていないところが多いというのが高校の現状といえそうです。 もう一つの問題は、全日制と定時制の差です。公立高校で障害のある生徒の「実態把握」の実施率を都道府県別に見ると、全日制課程では100%という都道府県は少数なのに対して、定時制課程ではほとんどの都道府県が100%実施しています。これは定時制課程が発達障害など障害のある子どもの受け皿になっているためと推測されます。 入試により子どもを選抜する高校は、学校によって子どもたちの状況が千差万別であることは確かでしょう。しかし、ほとんどの子どもたちが高校に進学する現在、全日制課程を中心に特別支援教育への取り組みを進めることが、高校教育の大きな責任の一つと言えます。

プロフィール 斎藤剛史 1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。 ※この記事は「ベネッセ教育情報サイト」で過去に公開されたものです。

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