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宮市亮、ザンクトパウリで完全復活。爆発的加速は健在、ブンデス2部で放つ別格の存在感

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 度重なるひざの大怪我に苦しめられてきた元日本代表FW宮市亮が、ブンデスリーガ2部のザンクトパウリでまばゆい輝きを放っている。今季はリーグ戦全試合に出場し、プレータイムはチーム内最長。監督やチームメイトたちからの信頼も絶大で、完全復活を印象づけている。27歳になった爆速ウィングは今、ドイツでどんなプレーを見せているのだろうか。(文:舩木渉)

●ウィング、サイドバック、2トップでも  新型コロナウイルスの影響で中断を余儀なくされていた世界各国のリーグ戦が再開に向けて動き始めている。  他に先駆けてリスタートを切ったブンデスリーガでは、フランクフルトの鎌田大地が初ゴール、長谷部誠もセンターバックで久々のフル出場を果たした。ブレーメンでは大迫勇也がチームを降格の危機から救うべく奮闘している。  ブンデスリーガ1部でプレーしている彼ら以外に、2部にも日本人選手たちがいる。ハノーファーの原口元気は23日に行われたオスナブリュック戦で、3人をかわしてのミドルシュートから再開後初ゴールを挙げ、PKも獲得してチームを勝利に導いた。試合中にシステムが変わり、左サイドからセントラルMFに移っても柔軟に対応していた。  シュトゥットガルトの遠藤航は、再開後にチームが連敗するなど結果こそ出ていないものの、個人としては安定感抜群のプレーを披露。変則的なシステムの中でも立ち位置の変わらない「軸」として機能している。  28日には昇格争いのライバルで勝ち点差1ポイントの2位ハンブルガーSVとの対戦が控えており、3位シュトゥットガルトとしては何としても勝利を掴み取りたいところだ。  そして、今季のブンデスリーガ2部の日本人選手を語る上で外せないのが、ザンクトパウリでプレーしている宮市亮だ。  チーム内のフィールドプレーヤーで最も出場時間が長く、リーグ戦は全試合に出場している。先発から外れたのは1試合だけで、途中交代も一度だけと、ヨス・ルフカイ監督から全幅の信頼を寄せられていることがよくわかる。  指揮官からの信頼をさらによく物語るのが、宮市の起用法だ。ウィンガーとしてのイメージが強いザンクトパウリの背番号12は、最も得意とする左右両ウィングのみならず、右サイドバックや右ウィングバック、シャドーストライカー、2トップの一角など様々なポジションを任されてきた。  もちろん試合中に役割が変わることもあり、宮市はそういった要求にも柔軟に対応して1得点5アシストという結果を残している。ルフカイ監督は4バックと3バックを併用し、複数のシステムを使い分けるが、どんな形であれ必ず宮市は使うという点において信頼度の高さはチーム随一だ。 ●ダルムシュタット戦は大敗したが…  リーグ戦再開後の3試合だけを見ても、実に様々なポジションをこなしてきた。再開初戦のニュルンベルク戦は3-5-2の右ウィングバック、2戦目のダルムシュタット戦は4-4-2の右サイドMFとして先発出場していた。  そして27日に迎えた3戦目のハイデンハイム戦、宮市は3-4-1-2の2トップの一角で先発起用された。地元メディアに対し「恥ずかしい試合をしてしまった」と悔いた0-4大敗の直後、中3日という強行日程でスタメンが4人変更された中でも、宮市への信頼は揺るがなかった。  ザンクトパウリは前節の屈辱的な敗戦から生まれ変わったように見違えるチームになっていた。ダルムシュタット戦はセンターバックがボールを持って前を向いても布陣全体が間延びし、誰もパスを受けようとせず、積極性は皆無だった。簡単にボールを失って反撃を食らい、カウンターで度々ディフェンスラインが危険な状態に晒されて後半に守備が崩壊してしまった。  一方、スコアレスドローに終わったハイデンハイム戦では前線から相手ボールホルダーへ積極的にプレスをかけ、ディフェンスラインの人数を増やしたことでボールを失うリスクも減った。ザンクトパウリのビルドアップは相変わらずぎこちなかったが、チーム全体の「何とかしなければ」という危機感や、それに伴う積極性は序盤からはっきりと見て取れた。  宮市はプレッシングの先鋒であるのと同時に、攻撃の崩しにおけるキーマンだった。2部リーグはどうしてもロングボールを多用して手数をかけずにゴールを目指す形も多くなるが、背番号12の元日本代表はそうした戦術にもマッチしている。  前線で一気に加速をかけて相手ディフェンスラインの裏へ走ると、そのタイミングに合わせて味方からパスが出てくる。やや雑なロングパスでも、相手をスピードで振り切った宮市はしっかりと自分の足もとに収めてチャンスに結びつけられる。 ●ザンクトパウリで確立した崩しの形  象徴的だったのは10分のプレーだ。右ウィングバックのルカ・ザンダーにボールが渡ると見るや、宮市は一気にギアを上げて右サイドに向けて走り出す。その動きを確認したザンダーが相手のいない右サイドの広大なスペースへ放り込むと、宮市はボールを収めて中を確認し、やや遅れて走りこんできた味方にグラウンダーの速いラストパスを供給した。  最終的にヴァウデミール・ソボタはシュートを外してしまったが、宮市の強みが存分に活かされた攻撃の形だった。22分には味方がボールを奪った瞬間に右サイドのスペースへ走り出してカウンターをけん引。ソボタからのスルーパスを引き出してワンタッチで折り返し、ヘンク・フェーアマンが空振りさえしなければ1点というビッグチャンスを作り出した。  大敗したダルムシュタット戦でも、サイドの相手DFの背後のスペースに走った宮市が味方からのスルーパスに抜け出し、ドリブルで深くえぐってクロスを上げるシーンは何度もあった。  ザンクトパウリでは、どんなシステムや選手構成であっても「宮市の動きを見る」ことが意識づけられていて、チーム総得点の約25%に関与する攻撃のキーマンになっているのだ。彼の圧倒的なスピードと瞬発力にはドイツの屈強な選手たちも簡単にはついていけない。  特に右サイドにおけるパフォーマンスは別格だ。今季のブンデスリーガ公式スタッツで宮市の「アシスト」として認められている5つのうち、4つは右サイドのスペースを突いて生まれている(※7アシストと表記するメディアもあるが、これにはファウルで獲得したフリーキックがゴールになったもの、ラストパスが途中で相手選手に触れているものも含まれている)。  味方との連係で抜け出してのワンタッチクロス、自らドリブルを仕掛けて深くえぐっての折り返しなどパターンも多い。  第20節のシュトゥットガルト戦では、右サイドの深い位置でパスを受けると、ワンタッチで対峙する相手DFの背後にボールを出し、爆発的な加速で自ら回収してゴール前に折り返した。いわゆる“1人スルーパス”や“裏街道”と呼ばれる類のスーパープレーで、フェーアマンのゴールを演出したのだった。 ●接触プレーも何のその。ドイツで完全復活  ザンクトパウリ加入直後の2015年に左ひざ前十字じん帯断裂、それから復帰した後の2017年には右ひざ前十字じん帯断裂も経験している。2018年に2度目の大怪我から復帰した直後、わずか12分間のプレーで再び負傷し、3度目の前十字じん帯断裂かと騒がれた。  結局、3度目の断裂は回避したものの、一時は現役引退もささやかれるほどだった。やはりスピードを武器にする選手にとってひざの大怪我は致命的なのだ。しかし、宮市はどん底から這い上がり、完全復活を遂げた。  かつてアーセナルに見初められ、フェイエノールトやボルトン、トゥエンテなどでプレーしていた頃のような爆発的な加速と、一瞬で相手を置き去りにするスプリントスピード、目の前の相手を翻弄する瞬発力は全く失われていない。  どうしてもスピードを武器とする選手はファウルで止められることが多く、無理な体勢から地面に叩きつけられて怪我をするリスクも大きい。宮市とて例外ではないが、今の彼は度重なる大怪我を経験しても、接触プレーへの恐怖心はないように見える。  真正面から相手と衝突しようが、後ろからユニフォームを引っ張って倒されようが、スライディングタックルを食らおうが、フィジカルコンタクトを恐れず何度でも立ち上がる。先に述べた通り周囲からの信頼も厚く、キャリア最高の時を過ごしていると言えるのではないだろうか。  昨季はリーグ戦に25試合1385分間に出場して5得点で、今季は現時点で28試合2440分間のプレーで1得点と、ゴール数が減っているという指摘もある。ただ、これに関してはほとんどが前線の攻撃的なポジションでのプレーだった昨季と起用法やチーム内での役割が変わっているからであって、決定力不足というわけではない。むしろ決定的なチャンスに絡む回数は増えている。  ザンクトパウリは現在12位で今季の1部昇格は難しい状況だが、クラブやファン・サポーターから愛され信頼される宮市は充実の日々を送れているようだ。これからもゴールやアシストといった結果を残し続ければ、2012年以来となる日本代表復帰も見えてくるかもしれない。  まずは変則的で難しい調整を強いられる今季のリーグ戦を怪我なく、後悔のない形で無事に終えられることを願うばかりだ。 (文:舩木渉)

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