『チ。』『宇宙兄弟』『彼方のアストラ』 “宇宙”をテーマにした名作アニメといえば?
“未来”を舞台にした『彼方のアストラ』『地球外少年少女』も
●スリルあふれる宇宙での冒険! 『彼方のアストラ』 直球で宇宙を舞台としたアニメとしては、『彼方のアストラ』を外すことはできない。原作は「マンガ大賞2019」の大賞に選ばれた篠原健太のマンガで、アニメ版もすぐれたSF作品に贈られる「第51回星雲賞」のメディア部門を獲得している。スリルあふれる冒険に加えて、ミステリーやサスペンスの要素も盛り込まれた壮大なストーリーだ。 物語の舞台は、宇宙旅行が普及した未来。主人公のカナタ・ホシジマは、少年少女だけで惑星に行き、5日間を過ごす「惑星キャンプ」へと出発する。しかし目的地の惑星に着くと、比較的安全だったはずの旅が一変。突如として現れた未知の球体に全員が飲み込まれ、宇宙空間へと放り出されてしまう。そして一行は5012光年離れた地点から、無事に生還するためのサバイバルを繰り広げていくことになる。 さまざまな生態系が広がる惑星を旅しつつ、お互いに絆を深めていく登場人物たち。その一方、仲間のなかに裏切り者が混ざっているという疑惑も生じてくる……。ロマンあふれる冒険に極上の味付けを施したアニメだ。 ●宇宙での生活をリアルに描いた『地球外少年少女』 『地球外少年少女』は、『電脳コイル』で知られる磯光雄が手掛けたオリジナルアニメ。2045年の宇宙を描いたハイクオリティなSFで、昨今話題の“AI”を題材としていることも特徴だ。 舞台となるのは、インターネットやコンビニなどを完備した安全で便利な日本製の宇宙ステーション「あんしん」。主人公である月生まれの少年・登矢は、ある日彗星と宇宙ステーションの衝突事故に巻き込まれてしまう。一転して危険な閉鎖空間となった施設のなかで、登矢は宇宙旅行にやってきていた子どもたちと共に困難へと立ち向かっていく。 同作の魅力はなによりも緻密なSF設定。現在のテクノロジーが進歩した先の近未来、人類が宇宙に居住空間を広げるとすれば、そこには一体どんな生活が待っているのか……。宇宙ステーションの描写は隅々まで丁寧に作り込まれていて、リアリティたっぷりでありながら、観る者をワクワクさせる要素に満ちている。 ●ひたむきに宇宙飛行士を目指す少女の物語『ふたつのスピカ』 泣ける宇宙モノとして有名なアニメといえば、2003年から2004年にかけてNHK BSで放送された『ふたつのスピカ』だ。 原作は柳沼行が『月刊コミックフラッパー』で連載していたマンガで、童話のようなタッチで人の心情を丁寧に寄り添って描いているのが特徴。アニメでは、そんな作風が上手く再現されていた。 作中の設定では、2010年に日本で初となる有人宇宙探査ロケット「獅子号」が打ち上げられたが、市街地に墜落して多くの犠牲者を生んだとされる。そしてその犠牲者の1人が主人公・アスミの母親で、植物状態での入院を経て死亡してしまう。 アスミはその後、生前に宇宙飛行士だったという男性の幽霊「ライオンさん」と出会い、宇宙への憧れを強く抱くように。国立東京宇宙学校への進学を希望し、夢に向けて動き出すのだった……。宇宙飛行士の夢をまっすぐに目指す少女の姿に、きっと胸を打たれるはずだ。 21世紀に入り、テクノロジーは進歩を続けているが、宇宙がロマンの象徴だった時代は過ぎ去りつつある印象が拭えない。しかし今でもその場所が人類にとって未知の空間であることには変わりがないはず。今後も宇宙を題材としたアニメが作られることを期待しつつ、過去の名作を振り返ってみてはいかがだろうか。
キットゥン希美