琉球ゴールデンキングスの目指す全員バスケの象徴、植松義也が残留した理由「もっと成長して桶さんに恩返しを」
「課題は毎試合見つかっているので、もっと改善してチームに貢献していきたい」
桶谷ヘッドコーチも、このように植松のパフォーマンスを称える。「できることを120%やり切ってくれることはチームにとってプラスになっています。3ポイントは練習中からよく入っていますし、今日はすごいレイアップを決めました。こうして結果が出てくれることで使いやすくなっています」 そして植松は「昨日は負けてしまいましたが、開幕してまず1勝目を挙げられることができてチームとしてより一体感が出て、また次に良い雰囲気に繋げられると思います」と試合を振り返ると、自身のプレーについてこう続ける。 「3ポイントシュートは今、佐々(宜央アソシエイトヘッドコーチ)さんと練習していて、去年まではコーナーでのキャッチ&シュートだったのが、今は動きの中でボールをもらって打つこともやっています。思いっきり打っていこう、と言ってもらえてプレシーズンから狙っているところです。シーズンが始まって2日続けて決められたのは自信に繋がります。また、5分の出場時間の中でもオフェンス、ディフェンスとも課題が見つかったのでもっと改善できるようにしていきたいです」 植松は明治大学を経てB2のライジングゼファー福岡に加入したが、在籍2シーズンで計34試合の出場に留まった。そして2022年夏、琉球に練習生として入団し、シーズン途中にプロ契約を勝ち取り、今シーズンで3年目を迎える。昨シーズンの23試合出場がキャリアハイと、植松は継続的に試合に出ることがなかった。それだけに、開幕節から連続出場とコンスタントに出場できる現在のチャンスを必ずつかみ取りたいと考えている。「5分ですが、プロになって安定してプレータイムをもらえていることはこれまでほとんどなかったです。この機会を得られているのはうれしいですし、課題は毎試合見つかっているので、もっと改善してチームに貢献していきたいです」 ここまで出場機会は少なかった植松だが、過去2シーズンは外国籍選手の欠場で出番を得た時には勝利に貢献するなど、少なからず爪痕を残してきた。琉球はリーグ屈指の強豪であり、出場機会のことだけを考えれば琉球を出る選択をしても驚きはない。 だが、彼は琉球に残った。プレータイムに関しては茨の道を自ら選んだわけだが、その根底にあるのは自分にチャンスを与えてくれた指揮官への感謝がある。「自分のことを練習生としてチームに入れてくれ、そこから(ロスターに)引き上げてくれた桶さんの存在は大きいです。自分の強み、弱みを理解してくれて、今シーズンはプレータイムをくれています。その中で成長できていると実感できていますが、もっと成長して恩返しをできたらという気持ちで、今シーズンもキングスで戦いたいと思いました」 まだ、シーズンは始まったばかりだが、指揮官は植松のスタッツ以外での献身性も評価している。「短いプレータイムの中でも集中力を切らさずにいつでも試合に出られる状態でいてくれるメンタリティーを持っています。チームとして勝者であるために必要な存在としても素晴らしいです」 琉球が今シーズンの大きなテーマに掲げている全員バスケットボールを継続し、チームの一体感を高めていくためには、例え5分だとしても植松が継続的にコートに立って爪痕を残し続けることは大きな意味を持つ。プロキャリアで大きな飛躍のチャンスを迎えている、彼のこれからが楽しみになる開幕節となった。
鈴木栄一