政党別の「獲得議席」最新情勢 自民党1人区で「27勝5敗」 左派政党の苦戦浮き彫りに 選挙プランナー松田馨氏が解説
【2022年夏・参院選】 第26回参院選は22日公示され、7月10日の投開票に向けて18日間の選挙戦に突入した。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、日本を取り巻く安全保障環境は激変した。21日のニューヨーク外国為替市場の円相場は一時、1ドル=136円台後半まで急落するなど、約24年ぶりの円安ドル高水準を更新した。「円安・物価高のダブルパンチ」は国民生活や企業活動を蝕(むしば)んでいる。岸田文雄首相(自民党総裁)による政権運営に、有権者はどのような審判を下すのか。泉健太代表の立憲民主党や、松井一郎代表の日本維新の会などの野党各党は支持を集められるか。夕刊フジは、選挙分析に定評のある選挙プランナーの松田馨氏に序盤の情勢分析を依頼した。「7・10参院選」の現状が明らかになった。 【当落予測リスト】首都圏選挙区の場合 政治評論家が分析 「現時点では、全体として盛り上がりに欠ける。自民、公明与党が優位に戦いを進める一方、立憲民主党など左派政党の苦戦が続いている」 松田氏は指摘した。 注目の獲得議席予測は、松田氏が世論調査や過去のデータ、最新情勢を分析して算出した。自公与党が75議席を得て圧勝するとの見通しだ。 自民党は「選挙区43、比例18」の計61議席で、非改選を含め6議席増の116議席に伸ばす。中でも、改選定数1の「1人区」では、32選挙区のうち27勝5敗と大きく勝ち越すとした。比例では、さらなる上積みの可能性があるという。山口那津男代表の公明党も計14議席と堅調が予測される。 背景には「野党共闘」の不調がある。 過去の参院選で、立憲民主党と、共産党(志位和夫委員長)、国民民主党(玉木雄一郎代表)、社民党(福島瑞穂党首)、れいわ新選組(山本太郎代表)など野党側は1人区の一本化に成功し、2016年に11勝、19年は10勝と健闘した。 だが今回、ウクライナの惨状を踏まえた、安全保障や憲法改正をめぐる政策・主張の違いなどから野党の溝が深まり、「左派野党の分断につながった」(松田氏)という。 松田氏が与党敗北と分析した1人区は、青森、岩手、山形、長野、沖縄の5選挙区。山形では、自民党の候補者擁立に混乱があった。沖縄では、かつての盛り上がりはないが「オール沖縄」勢力に軍配を上げた。 昨年10月の発足後、高支持率を保つ岸田政権だが、陰りも見える。 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が18、19両日に行った合同世論調査で、支持率は63・7%と5月調査から5・2ポイント下落した。国民生活に直結する「円安・物価高」の影響が大きいようだ。 参院選公示に合わせるように、ニューヨーク外国為替市場の円相場は21日夕(日本時間22日未明)、1ドル=136円台後半まで急落し、1998年以来、約24年ぶりの円安水準をつけた。 98年といえば、人気の高かった橋本龍太郎首相が7月の参院選で「予想外の大敗」を喫して、退陣した年である。恒久減税をめぐって、選挙中に橋本氏の発言が二転三転したことが原因とされる。 共同通信の最新世論調査(6月11~13日実施)では、物価高への岸田首相の対応について、「評価しない」が64・1%、「評価する」が28・1%だった。 だが、左派野党は「消費税減税」「ガソリン減税」などを掲げるだけで、岸田政権を攻め切れていない。今回の議席予測でも、立憲民主党は選挙区と比例で2議席減の計21議席、共産党も2議席減の計4議席、福島氏が改選の社民党は勢力ゼロの予測となるなど、厳しい情勢だ。 松田氏は「本来、自由に発言できる野党は論戦では有利だが、有権者がウクライナの過酷な現実を見て目覚めた。安全保障、経済、社会保障など、あらゆる分野で実現可能性のある主張や説明がないと説得力がない」と語る。 同じ野党でも、大阪での改革実績がある日本維新の会は6議席増の計12議席と躍進が予想される。比例代表で立憲民主党と伯仲し、野党第一党をめぐる争いに注目が集まる。 松田氏は「投票率が伸び悩めば、比例代表で1議席獲得に必要な票数のハードルも下がる。情勢によって、参政党やNHK党なども議席獲得の可能性が広がる」と分析する。 参院の定数は248議席で、過半数は125議席。3年ごとに定数の半数を改選する。自民、公明与党は今回計56議席を獲得すれば、「非改選」を合わせて過半数となる。自民党は70議席を獲得すれば、単独で125議席の過半数となる。 憲法改正に前向きな勢力が、改憲発議に必要な3分の2以上の議席(非改選を含め166議席)以上を獲得できるかどうかも焦点だ。