【コラム】第6回「なぜハミルトンは、ラッセルより遅いのか」|F1解説者ムッシュ柴田のピットイン
第6戦でメルセデスに復活の兆しも、英国人ドライバー2人は明暗クッキリ
楽勝の展開だったシャルル・ルクレールがまさかのリタイヤを喫した大波乱のスペインGPは、マックス・フェルスタッペンの3連勝で幕を閉じました。一方でメルセデスの鮮やかな復調も、印象的な出来事でした。 今季ここまでの5戦、ずっと手こずらされてきたポーパシング(激しい縦揺れ症状)がこれほど劇的に改善されるとは、正直予想外でした。はたしてメルセデスは完全復活を遂げ、これから優勝争いに絡んで来ると考えていいのか。
カタルーニャ・サーキットは路面のうねりやバンプが少なく、それに助けられた面は確かにあります。路面温度が高かったことも、タイヤの温まりに苦労するメルセデスには追い風でした。一方でここは純粋なマシン性能を確認するのに最適なコースであり、そこで予選でもレースでも速かったということは、マシン自体の素性はかなりいいはずです。 スペインGPの週末、ハミルトンは初日フリー走行から予選、レースまでの5セッションすべてで、ジョージ・ラッセルの後ろで終えています。F1デビュー以来のすべてのレースを確認したわけではないですが、ハミルトンが週末3日間チームメイトの後塵を拝し続けたGPは、フェルナンド・アロンソやジェンソン・バトン、ニコ・ロズベルグを相手の時もなかった気がします。
理由は、いくつか考えられます。両方のドライバーの観点から、思いつくままに挙げてみましょう。まずハミルトン側ですが、 ■1:モチベーションを失っている? ミハエル・シューマッハをしのぐ8つ目のタイトルを獲得するはずが、今季の2022年型W13にそんな戦闘力はないことが発覚し、すっかりやる気を失ってしまった。 ■2:実は速い車でないと、速くないドライバーなのかもしれない? 思えば2007年のF1デビュー以来、ハミルトンはずっと勝てるマシンに乗ってきました。 本人は「そんなことはない」と、2009年を挙げてますが、あの年のマクラーレンは夏以降復調し、ハミルトンも最終的に2勝しています。しかしマシンに戦闘力がなかった前半は、チームメイトのヘイキ・コバライネンに遅れをとることも珍しくありませんでした。その辺り、今季と状況的に似ています。