「偉人」の過去の不正義にどう向き合ったか〈下〉 被害者の三井絹子さんはどう考えるか 「人権を語ってきた人が私を傷つけた」
差別発言は消えない
むの氏が何も調べず婦長の言ったことをそのまま引用したのはジャーナリストとしてあるまじき行為です。引用するときは徹底的に調べて、どこからも文句を言われないようにするべきでしょう。講演会の場で話したということは、むの氏はしょうがいしゃに対して差別意識を持っていたことが明らかです。生前のむの氏は私を知らない。人権を語ってきた人だと聞きましたが、そういう人が私を傷つけました。出産は私にとって命懸けだった。子育ても誰よりも必死でやってきた。それを知ろうともせず、自分が正義だと言わんばかりの発言です。私は許しません。何年たとうが、差別発言は消えないのです。 実行委員会はこの問題に向き合えていないし、まだむの氏を崇めようとしている。むの氏が生前やってきたことや、人権感覚が素晴らしいジャーナリストであったことは過去であり、私の出産を大衆の前で批判的に話したことで、それまで彼がやってきたことを自分自身で台無しにしてしまったのです。過ちは誰にでもありますが、問題を指摘されても向き合わず、謝罪もせず、意見を変えなかったことが実態です。 私は、実行委員会の方が差別発言を知らなかったとしても、今回指摘されて、しっかりと責任をとるべきだと考えます。実行委員会のみなさんはむの氏を尊敬していて、同じ感覚を持っている。むしろこの問題を蒸し返した人が悪いかのように考えている。しかし、むの氏を大切だと思うなら、むの氏の発言を自分ごととして受け止め、学んで責任を取るべきです。私はこういう社会と闘ってきました。常に闘う覚悟はできています。
まとめ/室田康子