ポルシェ911 詳細データテスト MT+NAの快感 公道志向の足回り 遮音性はやや改善の余地あり
使い勝手 ★★★★★★★★☆☆
■インフォテインメント 新車で買えるうちでもっともドライバー志向の911にふさわしく、ドライバーの正面には大きなアナログ式回転計が位置し、インフォテインメントシステムのタッチ式センターディスプレイはダッシュボードへきっちり収められている。 とはいえ現行911は、メーターパネルを完全にデジタル化したGTSを除き、すべてがそうなっている。ステアリングホイールにはスイッチも備わるが、目立たない程度だ。マルチメディアと空調の主要な操作系は、いずれもプッシュボタンやダイヤル、トグルスイッチだ。 画面そのものは画像がシャープで、Apple CarPlayとAndroid Autoがどちらも使える。足りないのはワイヤレス充電器くらいだろう。その代わり、アームレスト内の収納部にはUSB-Cポートが2口、助手席フットウェルには12Vソケットが設置される。 標準装備のオーディオは、8スピーカー・150Wのサウンドパッケージ・プラスだが、テスト車には1152ポンド(約24万円)のボーズ・サラウンドサウンドが搭載されていた。12スピーカー・570Wのシステムで、クラリティは非常によく、大音量にも対応している。 ■燈火類 テスト車は、ポルシェ・ダイナミックライトシステムを装備。テスト機会はなかったが、以前に体験したものは照射範囲も鮮明さもすばらしかった。 ■ステアリングとペダル ブレーキの配置はど真ん中で、左右のペダルは直観的に操作できる位置。ステアリングコラムは、もう少し前後調整が効くといいのだが、それ以外に不満はない。
操舵/安定性 ★★★★★★★★★★
S/TがGT3と明らかに違い、現代最高レベルの公道向けドライバーズカーであることを明確にしているのは、サスペンションのチューンだ。 ダンパーはGT3ツーリングの2モード式だが、設定は刷新されている。英国においてGT3は、80km/h以下では本領を発揮できない。ストラットは、スプリングやダンパーがスムースに動き出すまでにかなりの負荷がかかるのを必要とする。スイートスポットはおそらく145km/hあたりで、それではちょっと問題がある。 その点、S/Tは違っている。確かな接地感や生まれ持った正確性とレスポンスのよさは、GT3にも見られるものだ。しかしながら、S/Tのサスペンションにはしなやかさが加わり、ボディの挙動にはこれまでGT部門の911が成し遂げられずにいた、高価そうな繊細さや優雅な表現力がもたらされている。 その結果は、忘れ難いものだ。独特の、ゆったりとした正確さや活力があり、911ならではのリア重心でややオーバーステア気味なバランスと相まって、走らせ甲斐のあるものになっている。また、荷重移動も多少わかりやすくなってるので、純粋に911らしいハンドリングをより簡単に楽しめる。 GT3RSでも同じようなことはできる。ただしそれはトラックモードを選び、ダンパーのバンプとリバウンドの制御を低めに設定した場合のみだ。それはちょっとばかり手がかかる。 ポルシェのエンジニアたちはまた、GT3の切りはじめが非常に敏感なステアリングと、ソフトめなサスペンションの組み合わせが、打てば響くような効果を生むことに気付いていた。そうなると、路面が悪い直線で飛ばすと、とっ散らかりやすくなる。 そこでS/Tの操舵系はややスローめに設定され、このクルマのほかの部分と同じく、ボディロールのレートと協調させている。じつにすばらしい。