「自宅が勝手に売りに出されてる?!」不倫した挙句、夫が非情な仕打ち 黙って出ていくしかない?
浮気して家を出ていった夫に、家を売りに出されてしまった──。このような相談が弁護士ドットコムに寄せられました。 相談者の女性は、夫名義の家に子どもと住んでいますが、夫が浮気をして家を出て行きました。その後、夫は相談者に離婚を迫るとともに、無断で家を売りに出したそうです。 家の名義が夫である以上、「法律的に夫が勝手に売れるのはわかる」といいますが、物置やフェンスは相談者の親が購入したもので、「勝手に売りに出されることには納得できない」ようです。 家が他人に売られてしまった場合、名義人でない相談者は家を出ていくしかないのでしょうか。新保英毅弁護士に聞きました。
●家を売られたら退去せざるを得ないが「防ぐ手立てはある」
――夫名義の家であれば、妻子が住んでいても、夫が勝手に売却することは可能なのでしょうか。 結婚後に購入または住宅ローンを支払っている自宅不動産は、夫婦共有財産として離婚財産分与の対象となり、たとえ夫の単独名義であったとしても妻にも潜在的な権利があります。 また、結婚期間中は妻と子どもが自宅不動産に居住継続できることが夫婦間の法律関係になっているといえます。 したがって、夫が妻に無断で自宅不動産を売却することは、不動産に対する妻の潜在的な持分や居住の権利を侵害するものです。 ただし、所有名義人である夫と第三者との関係では有効に売買契約が成立しますので、売却自体は可能となります。 ――相談者の親が購入した物置やフェンスまで含めて売却してもいいのでしょうか。 自宅不動産が売却される場合、フェンスは「土地の付合物」として、物置は「居宅の従物」 として一緒に売却されることになります。 仮に、物置の所有者が相談者ないしその親であったとしても、それが自宅不動産所有名義人夫の所有物であると信じて買主が不動産と一緒に引渡しを受けた場合は買主の所有となってしまいます。 ――家を売られてしまったら、相談者と子どもは出ていかなければならないのでしょうか。 実際に不動産が売却され所有権移転登記がされてしまうと、新たな所有者から退去を求められた場合、法的には退去しなければならなくなってしまいます。 夫に自宅不動産を無断で売却されないようにするために妻が取り得る方法として、「仮処分」や「仮差押」があります。 これは、妻の財産分与上の権利を保全するために自宅不動産の処分禁止の仮処分や仮差押を裁判所に申し立てるというものです。 仮処分や仮差押がされると、その後になされる売却の効力を否定することができ、事実上、無断売却はできなくなります。 もし仮処分や仮差押をする前に無断売却されてしまった場合は、夫に対し、今後の離婚財産分与において別居時の自宅の価値を前提に金銭での財産分与を求めるととともに、無断売却という不法行為を理由とする損害賠償請求をすることになります。 【取材協力弁護士】 新保 英毅(しんぼ ひでたか)弁護士 新保法律事務所 2004年弁護士登録。相続・遺産分割事件、中小企業の法務の案件を多く取り扱っている。モットーは「依頼者ひとりひとりに適したオーダーメイドのサービス」。