日本でも発見されたコロナ変異種 「科学者が恐れているシナリオ」と「今すべき対策」
新型コロナウイルスのワクチンがパンデミック終息への希望を提供しはじめたと思いきや、イギリスでは非常に感染力の強い変異種が広がっていると報じられた。従来のものより感染力が70%も強い可能性があると指摘されている。 これを受けて、首都ロンドンとその周辺地域では3度目のロックダウンを実施。クリスマスの直前だが、ボリス・ジョンソン首相は「ウイルスが攻撃の方法を変えるなら、私たちも対策を変える必要がある」と述べ、国民に理解を求めた。 ヨーロッパ諸国はすぐにイギリスからの渡航を禁じる動きを取り、ロンドンの駅には脱出を図る人が殺到。ドイツの週刊誌「シュピーゲル」によれば変異種はイギリス国外にも広がりつつあり、すでにデンマークで9例、イタリア、オランダ、オーストラリアで1例が報告されている。 また南アフリカ共和国でも類似の変異が確認されており、仏通信社「AFP」によれば同国のズウェリ・ムキゼ保健相はこの変異種によって第二波が引き起こされた可能性があると指摘しているという。 では今回の変異種について、科学者たちはどう反応しているのか。米「ニューヨーク・タイムズ」紙は、「心配はしているものの、驚いてはいない。研究者たちはこれまでも、コロナウイルスの遺伝物質に何千もの小さな変化を確認している」と書く。 またワクチンが効かなくなるのではないかという懸念の声もあるが、同紙は、現在のワクチンが無効化されるほどウイルスが進化するには数ヵ月ではなく数年はかかるだろう、とする専門家たちの見解を紹介している。
恐れているのは「突然変異」の蓄積
科学者たちが恐れているのは、ウイルスが変異すること自体ではなく、免疫反応を回避したり、抵抗したりするのに役立つ突然変異が起きることだ。何百万、何千万という人にワクチンを接種することで、ウイルスが新たな適応を余儀なくされ、突然変異を起こす可能性があるのだ。すでに新型コロナウイルスには小さな変化が世界中で何度も起きており、突然変異がウイルスをさらに厄介なものにする可能性は否定できない。 一方で、一度の突然変異で人間の免疫反応を回避できるほどの変化は起きないとみられている。米シアトルに拠点を置くフレッド・ハッチンソンがん研究センターのジェシー・ブルーム博士は、インフルエンザウイルスも免疫の認識から逃れるのに充分な変異を起こすのには5~7年かかると指摘する。 多くの人々にワクチンを接種して感染者数を抑えれば、ウイルスが大幅に変異する可能性も最小限になる。並行してウイルスを綿密に調査し、もし突然変異が起きていたとすれば、それに合わせてワクチンを微修正することが必要だ。 実際、インフルエンザウイルスについては突然変異を定期的に監視しており、新型コロナウイルスについても同様の対応が必要になる。同研究センターのトレバー・ベッドフォード博士は、「インフルエンザワクチンと同じようなプロセスが想像できます。誰もが年に1回、コロナワクチンを打つようになるでしょう」とニューヨーク・タイムズに語る。 また、ベッドフォード博士によれば、接種が始まったファイザーやモデルナのワクチンは、従来のワクチンよりも微調整が容易だという。
COURRiER Japon