2015年の新語・流行語大賞にノミネート「ミニマリスト」…そのブームから10年で変わった"日本人の価値観"
■「モノよりコト」の消費トレンドに通じる なぜなら、近年の消費のトレンドは、モノよりコトで、それはミニマリストたちが大切にする価値観でもある。自動車や住まい、職場などのシェアビジネスが発達した結果、持たなくても生活で困らない環境も整いつつある。モノは飽きやすく不要、あるいは邪魔になることもあるが、思い出は心に残るだけだ。冒頭で挙げたホテルライクな暮らしもそうだが、すでにミニマリストに親和性が高い価値観が、現代社会には浸透してきている。 しかし、執着があるモノを捨てられないのも、必ずしも非難されることではない。今でもおそらく、多数派は管理しきれないモノを持つ人たちだろう。モノに囲まれる安心感も大切だし、いざというときに役に立つモノもある。佐々木も非常用品は持っていたほうがよい、と書いている。何をどれだけ持つのか、それは住居費に見合ったモノなのか、捨てた人も捨てられなかった人も、年の初めに改めて検討してもよいかもしれない。そして同居人がいる人の場合、モノを捨てる行為を強要しないことも、関係を良好に保つために忘れてはならないポイントである。 ---------- 阿古 真理(あこ・まり) 生活史研究家 1968年生まれ。兵庫県出身。くらし文化研究所主宰。食のトレンドと生活史、ジェンダー、写真などのジャンルで執筆。著書に『母と娘はなぜ対立するのか』『昭和育ちのおいしい記憶』『昭和の洋食 平成のカフェ飯』『「和食」って何?』(以上、筑摩書房)、『小林カツ代と栗原はるみ』『料理は女の義務ですか』(以上、新潮社)、『パクチーとアジア飯』(中央公論新社)、『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか』(NHK出版)、『平成・令和食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)、『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。』(幻冬舎)などがある。 ----------
生活史研究家 阿古 真理